シネコラム

第577回 ヤマトタケル

第577回 ヤマトタケル


平成六年七月(1994)
有楽町 日劇東宝

 

 日本神話を『エクスカリバー』や『スターウォーズ』のように表現したファンタジーの 佳作。
 時は太古の大和。黒魔術師ツキノワが主人の悪神ツクヨミの帰還を待ち望んでいる。ツ クヨミは支配神アマテラスの弟だが、邪悪さゆえに疎まれ、スサノオに敗れ、暗黒の世界 の果てに追放されてしまったのだ。それが力を盛り返し、今は地上に迫っている。
 その頃、オオキミ景行天皇の后が双子を生む。ツキノワは双子の弟オウスに偉大な光を 感じ、捨てるように忠告する。オオキミはオウスを捨てるが、オオキミの妹ヤマトヒメが それを拾って成人するまで育てる。宮廷に戻ったオウスはオオキミに忌み嫌われ、クマソ 征伐にやられる。途中、オトタチバナと出会い、共にクマソへ赴き、クマソの族長タケル を殺し、その名を貰ってヤマトタケルと名乗る。
 ここで、オトタチバナがクマソの怪物の生け贄にされるのを退治するシーンがあり、か つてのハリーハウゼン風のクマソガミが登場するのは楽しい。
 ヤマトへ生還しても、やはり疎まれ、最後は暗黒の世界から蘇り月面に闇の宮殿を築い たツクヨミと対決する。ツクヨミがヤマタノオロチに変身するのは東宝怪獣映画シリーズ のキングギドラを思わせ、ヤマトタケルが合体ロボットのように変身するのは『ウルトラ マン』シリーズであろうか。つまり、この映画は夏休みの子供たちを観客として当て込ん だのであろう。
 ヤマトタケルが髙嶋政宏、オトタチバナが沢口靖子。ツクヨミが阿部寛、クマソタケルが 藤岡弘、景行天皇が篠田三郎、ヤマトヒメが宮本信子、スサノオが目黒祐樹、黒魔術師ツ キノワが麿赤児という豪華キャストである。

 

ヤマトタケル
1994

監督:大河原孝夫
出演:髙嶋政宏、沢口靖子、宮本信子、阿部寛、藤岡弘、篠田三郎、石橋雅史、ベンガル、杜 けあき、秋篠美帆、目黒祐樹、麿赤児、大岡旭
←飯島一次の『映画に溺れて』へもどる