シネコラム

第640回 スコルピオンの恋まじない

飯島一次の『映画に溺れて』

第640回 スコルピオンの恋まじない

平成十五年六月(2003)
飯田橋 ギンレイホール

 

 映画監督であり、戯曲や小説も書くウディ・アレンだが、コメディアンとして自作の映画に多数主演している。役柄は『ボギー俺も男だ』などに登場するタイプ。体形が貧弱で、情けない顔。知ったかぶりで偉そうなことをぺらぺらしゃべって女性に嫌われる。
 六十代半ばになったウディ・アレンが監督して主演した『スコルピオンの恋まじない』もほぼ同様の役柄。一九四〇年のニューヨークが背景の犯罪ラブコメディでヒロインがヘレン・ハント。お互い嫌いあっている男女が結ばれるのはパターンだが、催眠術がきっかけとなる。
 C・Wは保険会社の腕利き調査員。社内の財政改革のため乗り込んできた女性上司のベティ・アンと仲が悪い。同僚の誕生パーティでキャバレーへ行き、そこのマジックショーで舞台に上げられ、催眠術をかけられる。「コンスタンチノーブル」の呪文でC・Wはぎすぎすした鬼婆と憎むベティ・アンを、「マダガスカル」の呪文でベティ・アンは下品で冴えないイタチ男と蔑むC・Wをお互い相思相愛の相手と思い込む。が、術が解けると途端にまた犬猿の仲。同僚たちはショーに大笑い。が、この催眠術師は悪人で催眠術は完全犯罪の罠だった。夜中に電話で「コンスタンチノーブル」の呪文で指図されるまま、富豪宅に忍び込んで宝石を盗むC・W。朝にはなにも記憶しておらず、保険調査員として、自分で盗難を捜査する。だが、犯行を怪しまれて逮捕され、留置所を脱走して、無実を証明するためにベティ・アンのアパートに忍び込む。その夜、彼女も催眠術師の呪文で指令を受ける。術から覚めないベティ・アンはアパートにいるC・Wに優しく声をかけ、C・Wもその気になるが、朝になると追い出される。
 謎が解けて事件は解決し、C・Wは社長に辞職の挨拶に行く。社長と不倫関係だったベティ・アンは離婚が成立した社長と晴れて結婚が決まる。催眠術とは関係なく彼女を愛していたと気づいたC・Wは思い切って告白するが、鬼のような顔で蔑むベティ・アン。社長と新婚旅行に出かけようとする彼女にC・Wは呼びかける。「行き先はマダガスカル?」

スコルピオンの恋まじない/The Curse of the Jade Scorpion
2001 アメリカ/公開2002
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、ヘレン・ハント、ダン・エイクロイド、シャーリーズ・セロン、ウォーレス・ショーン、ブライアン・マーキンソン、エリザベス・バークレー

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