シネコラム

第618回 誘惑のアフロディーテ

飯島一次の『映画に溺れて』

第618回 誘惑のアフロディーテ

平成十年四月(1998)
高田馬場 早稲田松竹

 

 ウディ・アレンが監督主演したコメディで、ミラ・ソルヴィノがアカデミー助演女優賞を受賞した。ミラの父親ポール・ソルヴィノは『ウィークエンドラブ』などでコミカルな人物を演じるちょっと太めの脇役だが、長身のミラは美の女神さながらである。
 野外劇場でギリシア悲劇のコロスたちが神の気まぐれによる複雑な因縁話を語るが、それは現代のアメリカにも通じる物語となる。
 ニューヨークのスポーツ記者のレニーと画廊経営を夢見るアマンダの夫婦。子供は欲しいが妊娠はいやというアマンダの主張が通り、赤ん坊を養子にしてマックスと名付ける。幼いマックスは賢くていい子に育つ。するとレニーはマックスの実の母親の素性を知りたくなる。これが野外劇場のカサンドラの予言通り、悲喜劇の始まりとなる。ようやく探し当てたマックスの母親リンダは元ポルノ女優の娼婦だった。
 レニーは自分が彼女の子の養父であることを隠してリンダに近づき、次第に親しくなる。セックス抜きで自分を買う変な客と思って敬遠していたが、親切にほだされ、彼女も娼婦から足を洗う決心をする。
 レニーは田舎出の無知な青年ケヴィンとリンダを結び付けようと悪戦奮闘。ケヴィンは美女リンダが気に入って結婚する気になり、リンダも喜んで婚約にまで発展するが、バチェラーパーティでポルノビデオを見たケヴィンがリンダの過去を知り、怒り狂い破局。リンダに同情したレニーは彼女と一夜を共にする。
 やがて彼女は身籠り、理解ある男性と知り合って結婚。レニーも一時は気まずくなっていた妻との仲も修復される。
 物語の随所に顔を出し、レニーに助言するコロスたちが、ラストシーンで「ウェン・ユア・スマイリング」を歌って踊り、悲劇にならずめでたしめでたし。

誘惑のアフロディーテ/Mighty Aphrodite
1995 アメリカ/公開1996
監督:ウディ・アレン
出演:ウディ・アレン、ヘレナ・ボナム=カーター、ミラ・ソルヴィノ、マイケル・ラパポート、ピーター・ウェラー、クレア・ブルーム、F・マーリー・エイブラハム、オリンピア・デュカキス、デヴィッド・オグデン・スティアーズ、ジャック・ウォーデン、ダニエル・ファーランド

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