シネコラム

第600回 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

飯島一次の『映画に溺れて』

第600回 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

令和五年六月(2023)
立川 TOHOシネマズ立川立飛

 

 考古学者で大学教授で冒険家でもあるインディアナ・ジョーンズを主人公にした『レイダース』が公開されたのが一九八一年であり、演じるハリソン・フォードは四十歳だった。映画の時代設定は一九三六年となっており、世界征服を企むヒトラーが求める秘宝をめぐって、インディアナはナチスと対決する。
『レイダース』はヒットして続編が作られ、第二作の『魔宮の伝説』は失われたアークの一年前のインドが舞台、第三作の『最後の聖戦』は聖杯をめぐってナチスと戦う一九三八年に設定され、父親をショーン・コネリーが、インディアナの少年時代をリバー・フェニックスが演じた。第四作は戦後の米ソ冷戦時代が舞台で、敵はナチスではなくケイト・ブランシェットのKGB、時代設定に合わせてインディアナは順調に年齢を重ねていく。
 今回の『運命のダイヤル』は第二次大戦末期の一九四四年に古代の遺物を収集するナチスと戦う場面で始まるが、やがて、時が流れて、戦後のアポロ月面着陸の一九六九年が背景となり、大学で無気力な学生相手に考古学の講義を続けるインディアナ・ジョーンズ博士は七十代の設定。息子のマットがベトナムで戦死し、そのため妻のマリオンと別れて、孤独な独り暮らしである。
 大学を定年で退職した日に彼を訪ねてきた若い女性、ヘレナはかつて友人だった考古学者の娘で、亡き父がインディアナに預けた歯車のついた古代の文字盤アンティキティラのダイヤルについて、意見を求める。古代ギリシャのアルキメデスが関与した文字盤の数値にはある秘密が隠されている。マッツ・ミケルセンふんするナチスの残党も文字盤を狙ってふたりを襲い、中東、ギリシャ、シチリアを舞台に派手な争奪戦が繰り広げられる。
 インディアナ・ジョーンズは十九世紀末の生まれらしく、一九六九年には七十代初めの設定だが、八十歳のハリソン・フォードが演じても違和感はなかった。七十も八十も老人には大差がないということか。

インディ・ジョーンズと運命のダイヤル/Indiana Jones and the Dial of Destiny
2023 アメリカ/公開2023
監督:ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、マッツ・ミケルセン、アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、トビー・ジョーンズ、イーサン・イシドール、ボイド・ホルブルック、トーマス・クレッチマン、カレン・アレン

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