シネコラム

第599回 MEMORY メモリー/Memory

飯島一次の『映画に溺れて』

第599回 MEMORY メモリー/Memory

令和五年五月(2023)
日本橋 TOHOシネマズ日本橋

 

 だれしも歳を取る。七十過ぎても元気いっぱいな人も多いが、病気で寝たきりになったり、認知症に苦しむ人も多く、社会問題として、様々な映画の題材となっている。
 ヒーローでさえ老いることがあり、衝撃的だったのは二〇一七年のXメンの番外篇『ローガン』で、認知症になったプロフェッサーXをウルヴァリンが介護していた。
 それはさておき、『シンドラーのリスト』で脚光を浴び、その後、リアルな犯罪アクション映画に多く主演するリーアム・ニーソンが七十歳を過ぎた殺し屋を演じたのが『メモリー』である。
 メキシコ国境に近いテキサスの都市エルパソで、凄腕の殺し屋アレックスはアルツハイマーのため、引退を考えていたが、旧知の仲介人マウリシオから仕事を頼まれ、これを最後にしようと渋々引き受ける。
 一方、FBIの捜査官セラは少女売春の組織を同僚のリンダやメキシコ警察から応援に加わったマルケスとともに追っており、売春現場に踏み込んだ際、犯人が死亡し、ひとり生き残ったメキシコ人の少女を重要な証人として、地元の養護施設に入所させる。
 ところが、殺し屋アレックスの標的はこの少女だったのだ。報酬のためにさんざん殺人を犯してきた彼だが、子供だけは殺したくないと仕事を拒否し、逆に依頼者から命を狙われて、反撃に出る。殺しの依頼の黒幕は少女売春と関係する実業家だった。
 実業家とつながりのあるFBIのトップや地元警察はセラやリンダを冷遇し、マルケスは捜査から外される。アルツハイマーで記憶がとぎれながらも、アレックスは、戦闘能力を発揮し、黒幕に迫り、悪事の証拠をつかむのだが、正義感の強い捜査官と犯罪歴の多い殺し屋がすんなり協力し合うわけにもいかず。
 捜査官セラのガイ・ピアースはかつて『プリシラ』で歌って踊る若い女装のゲイだったが、渋い中年になっている。黒幕のモニカ・ベルッチは相変わらず若々しい。リーアム・ニーソンはとうとう実年齢の高齢者を演じるが、今まで通り頼もしい凄腕である。

MEMORY メモリー/Memory
2022 アメリカ/公開2023
監督:マーティン・キャンベル
出演:リーアム・ニーソン、ガイ・ピアース、モニカ・ベルッチ、ハロルド・トレス、タジ・アトウォル

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