シネコラム

第595回 M3GAN ミーガン/M3GAN

飯島一次の『映画に溺れて』

第595回 M3GAN ミーガン/M3GAN

令和五年六月(2023)
立川 TOHOシネマズ立川立飛

 

 古今東西、人形には魂が宿ると言われていて、自然に動いたり、しゃべったりする怪異が伝えられ、死霊や悪魔が憑依した魔性の人形など、怪奇小説やオカルト映画の題材となることも珍しくなかった。
 さて、『ミーガン』は持ち主の少女と心を通わせ、少女を守り、嫌な思いをさせないために敵と戦う人形を描いたホラーであるが、決してオカルトではない。
 玩具会社の開発部に勤務するジェマは学生時代にはロボット工学を専攻し、自宅の物置には試作品のロボットが保管されている。会社は死なないペットとして、毛むくじゃらでぎょろ目の縫いぐるみ人形を売り出しているが、これが一時期流行したグレムリンやファービー人形を思わせる。
 ジェマのチームは会社に無断でペット人形をさらに進めて、密かにAI機能の少女型人形ミーガンを開発し、ほぼ完成していたが、上司に見つかり、仕方なく家に持ち帰る。
 ちょうどそのとき、ジェマの姉一家が自動車事故に遭い、姉夫婦は死亡、命をとりとめた幼い姪のケイディを自宅に引き取ることになる。
 両親の死のショックから立ち直れず、打ち解けないケイディの遊び相手として、ジェマは持ち帰ったミーガンを与える。身長百二十センチのミーガンは人と同じようにしゃべり歩き、学習能力も優れていて、すぐにケイディの仲良しとなる。
 ケイディを温かく見守るミーガンを見て、ジェマはこれこそ期待の新商品になると確信し、上司に伝え、AIミーガンは重役に認められ、高価ながら売り出しの準備が始まる。
 外見は少女人形だが、人間以上に知能が優れ頑強なボディを持つミーガンはケイディを傷つける者たちを次々に排除しようと能力を発揮し、やがて周囲は恐怖におののくことになる。つまり、人形オカルトではなく少女型ロボットのSFホラーであり、これもまたフランケンシュタインの新しいスタイルというべきか。

M3GAN ミーガン/M3GAN
2023 アメリカ/公開2023
監督:ジェラード・ジョンストーン
出演:アリソン・ウィリアムズ、バイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン、ブライア ン・ジョーダン・アルバレス、ジェン・バン・エップス、ロリ・ダンジー、ステファヌ・ ガルヌ=モンテン

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