シネコラム

第525回 シャーロック・ホームズ 恐怖の館

第525回 シャーロック・ホームズ 恐怖の館

平成二十八年十一月(2016)
曳舟 すみだ生涯学習センター

 

 ベイジル・ラスボーン主演のホームズ映画は20世紀フォックスの最初の二本だけが原作と同時代のヴィクトリア朝になっているが、ユニバーサルの十二本はすべて一九四〇年代当時の設定である。ベネディクト・カンバーバッチの『SHERLOCKシャーロック』やジョニー・リー・ミラーの『エレメンタリー』同様、当時の現代版ホームズだったのだ。
 一九四〇年代のロンドン、ベイカー街221bにワトスン医師と同居する探偵ホームズは政府の要請でナチススパイと対決することもあれば、一般の依頼人から持ち込まれた謎も引き受ける。
『恐怖の館』の依頼人は保険会社である。スコットランドの海辺の崖に建つ大きな屋敷に引退した紳士たちがクラブを作って住み込んでいる。主人のアラステア他、医者、弁護士、俳優、船長などみなで七人。ある夜、夕食時に弁護士の席に封筒が届き、中にはオレンジの種が七つ。翌日、弁護士は自動車事故で死亡。次の夕餉には俳優の席に封筒が届き、オレンジの種が六つ。十日後に俳優は溺死体で発見される。
 七人の紳士はみな高額の生命保険をかけており、受け取り人がクラブそのものになっている。
 保険会社の依頼でホームズとワトスンがスコットランドに赴くと、その夜に屋敷で第三の殺人事件が。やはり死者には前日にオレンジの種が届いていた。
 ホームズとワトスンはアラステアの館に滞在するが、さらに次々と第四、第五の事件が起こり、クラブの紳士が命を落とす。さて、犯人はだれか。
 保険金目当ての殺人というのが、目新しい。殺人予告のオレンジの種はコナン・ドイルの原作からの引用だが、KKKとは関係ないようだ。

 

シャーロック・ホームズ 恐怖の館/The House of Fear
1945 アメリカ/未公開
監督:ロイ・ウィリアム・ニール
出演:ベイジル・ラスボーン、ナイジェル・ブルース、オーブリー・マザー、デニス・ホーイ、ポール・キャヴァナー