シネコラム

第510回 キャメラを止めるな!

第510回 キャメラを止めるな!

令和四年七月(2022)

立川 キノシネマ立川

 

 リメイクは難しい。どんなに上手に模倣しても、それはオリジナルが素晴らしいからで、たいして手柄にはならない。模倣が下手で見劣りしたり、余計なアイディアを加えて失敗したら、オリジナルファンから罵倒されることになる。

 大ヒット作のリメイクの場合、オリジナルを観ているからもういいという人が多いので、興行的にもさほど成功するとは思えない。私が記憶する成功例は黒澤明の『七人の侍』をアメリカの西部劇に置き換えた『荒野の七人』であろうか。

 それはさておき、二〇一八年の日本映画界の話題を独占した大ヒット作『カメラを止めるな!』がフランスでリメイクされた。

 オリジナル版は映画製作現場を描いたトリュフォーの『アメリカの夜』を連想させるドラマであり、低予算B級ゾンビ映画の撮影過程で次々と発生するトラブルが笑いを生む。これがどんなフランス映画になるのだろうか。と思っていたら、最初の短編ゾンビ映画の場面からして、フランス人が演じているのに役名がみな日本名。安い、早い、出来はそこそこの監督レミーに日本のプロデューサーから仕事の依頼が舞い込むというオリジナル通りのストーリーが展開する。

 監督役の俳優がメイク係役の女優と不倫で事故に遇い、急遽、監督のレミー自身が監督しながら監督役も演じ、現場に見学に来ていた監督の妻の元女優ナディアがメイク係を演じる。レミーがフランス風にアレンジした場面や登場人物の役名が日本のプロデューサーの意向で一字一句変更できなくなる。という場面などはフランス風だが、全体としてはほとんどオリジナルのままなのだ。オリジナルのアイディアの巧みさを改めて実感する。

 オリジナル版『カメラを止めるな!』は監督や俳優たちがお金を出し合って作った自主映画だったが、今回のフランス版『キャメラを止めるな!』は、監督がミシェル・アザナヴィシウス、主演のレミー役がロマン・デュリス、ナディア役がベレニス・ベジョと大物ぞろい。オリジナルと見比べるのもまた映画ファンの大いなる楽しみである。

 

キャメラを止めるな!/Coupez!

2022 フランス/公開2022

監督:ミシェル・アザナヴィシウス

出演:ロマン・デュリスベレニス・ベジョ、グレゴリー・ガドゥボワ、フィネガン・オールドフィールド、マチルダ・ルッツ、セバスティアン・シャッサーニェ

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