シネコラム

第475回 エネミー・オブ・アメリカ

第475回 エネミー・オブ・アメリカ

平成十一年四月(1999)
渋谷 渋東シネタワー2

 

 二十世紀末、コンピューターは市民生活の隅々にまで浸透し、電話やインターネットによる通信、各所の防犯監視カメラ、個人の銀行口座まで管理している。
 国家保安局幹部レイノルズはテロ対策を口実に、国民を徹底的に監視する法案を通過させるため、反対派の議員を保安局の部下に事故に見せかけ殺害させる。
 その現場が野鳥観察用の自動カメラに収められており、カメラの所有者の写真家は身の危険を感じ、ディスクをゲーム機に入れて逃走、たまたま路上で旧友の弁護士ディーンに出会い、とっさにゲーム機をディーンの紙袋に隠し、直後に保安局に追われ車に跳ねられ即死。国家保安局は監視カメラからディーンと写真家の接触を探知、通信衛星を使ってディーンの身辺を洗う。
 旧友との偶然の出会いから保安局の陰謀に巻き込まれたディーンに次々と災難がふりかかる。保安局の偽情報によって弁護士事務所を解雇され、不倫を疑われて妻から家を追い出され、銀行口座を凍結されてクレジットカードも使えない。その上、かつての恋人で情報屋のレイチェルが保安局の工作員に殺され、殺人犯に仕立てられる。
 追い詰められたディーンはレイチェルのボスで腕のいい情報屋ブリルに連絡を取る。接触を探知した保安局はブリルにも手を回し、危険を察したブリルは仕方なくディーンを助けることになる。ブリルは元保安局の工作員で、監視システムを知り尽くしており、反撃に出る。そして、痛快な結末。
 が、今はもう二十一世紀、監視システムはさらに進歩しており、知らない間にプライバシーはないも同然かもしれない。
 ディーンがウィル・スミス、情報屋ブリルがジーン・ハックマン、保安局レイノルズがジョン・ボイト。殺害される議員がジェイソン・ロバーズ。渋い配役である。

 

エネミー・オブ・アメリカ/Enemy of the Stated
1998 アメリカ/公開1999
監督:トニー・スコット
出演: ウィル・スミス、ジーン・ハックマンジョン・ボイトリサ・ボネレジーナ・キング、スチュアート・ウィルソン、ガブリエル・バーントム・サイズモアローレン・ディーンバリー・ペッパーイアン・ハートジャック・ブラック、ジェイソン・ロバーズ