第447回 羊たちの沈黙
平成三年十一月(1991)
池袋 文芸坐
不気味な映画だった。おぞましい場面があるからぞっとするのではない。映像と音楽と俳優たちの演技で不気味な雰囲気を醸し出していた。
ジョディ・フォスターふんするFBI実習生クラリスがランニングしている場面から、すでに不安をあおりたてるような始まりなのだ。
被害者の女性が皮膚を剥がされた死体で発見されるという連続猟奇殺人事件。
クラリスは上司クロフォードに呼び出され、事件の手がかりを得るために、異常犯罪の専門家に会いに行く。
ハンニバル・レクター博士。ふんするはアンソニー・ホプキンス。
天才的な犯罪心理学者でありながら、殺人鬼であり人肉嗜食者であり、異常犯罪者を収容する特殊精神病院に隔離されている。
古城の地下室を思わせるような監房にクラリスが降りて行く場面でぞくぞくする。そして、ガラス戸の向こうに拘束されたレクターが姿を現す。
一見知的で温厚な紳士である人食いレクターは、彼女の服装や話し方から出身や階層までを推理する。彼はまったく意外なタイプのシャーロック・ホームズなのだ。
レクターはクラリスを気に入り、彼女が示す手がかりに助言を与える。
そんな最中に上院議員の娘が誘拐され、犯人は一連の猟奇殺人鬼だとわかる。
出世主義者の病院長チルトン博士によって、レクターは地方の刑務所に移送される。
クラリスはレクターの言葉にヒントを見つけ独自に犯人を追う。
やがて、レクターはトリックを使って刑務所を脱出する。
事件解決後、クラリスの表彰パーティの会場にレクターから祝いの電話がかかるラスト。レクターはこれから旧友と食事だからといって電話を切るが、彼の食事とは。
レクター博士役でアカデミー主演男優賞を受賞したアンソニー・ホプキンスの出世作であり、その後『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』でもレクターを演じた。
羊たちの沈黙/The Silence of the Lambs
1991 アメリカ/公開1991
監督:ジョナサン・デミ
出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レビン、アンソニー・ヒールド