シネコラム

第446回 キャラクター

第446回 キャラクター

 

令和三年六月(2021)

六本木 TOHOシネマズ六本木ヒルズ

 

 ホラー漫画を愛する青年がいる。山城圭吾は長年、著名な漫画家のアシスタントをしながら、なんとか独立して一本立ちしようと新人賞に応募し続けている。いつもいい線までいくのだが入選は一度もしていない。絵が抜群にうまく、ぱっと見てなんでもスケッチしてしまう。そんな才能の持ち主がなぜプロの漫画家としてデビューできないのか。

 ようやく面談が叶った人気雑誌の編集者に言われる。絵はよく描けているが、キャラクターが凡庸で、全然魅力がないと。彼自身、根が善人で優しすぎて凶悪な人間が描けないのだ。

 そんな山城がたまたま猟奇殺人の現場に出会う。一家四人をナイフで残忍に刺し殺し、死体をロープで椅子に縛り付けて、これ見よがしに展示したかのような恐ろしい情景である。逃げ去る犯人をちらっと目撃するが、警察での取り調べで、そのことは黙っている。そして、家に帰るなり、憑かれたように机に向かって描き始める。

 一年後、一家四人殺しの猟奇殺人を題材にした『34(さんじゅうし)』という作品が大ヒットし、山城圭吾は超売れっ子の漫画家となっている。主人公の殺人鬼の顔は、彼が一年前に目撃した犯人がモデルである。

 その後、前科者の変質者が犯人として逮捕され、事件は解決したかに思えたが、山城は気が気でない。彼が目撃した真犯人とは似ても似つかない中年男なのだ。案の定、第二の猟奇犯罪が発生する。山城の『34』に描かれた第二の一家四人殺しをそのまま再現したものだった。やがて彼の前に犯人が姿を現す。

 あれは山城先生と僕との合作ですよね。先生の『34』は大好きです。

 猟奇犯罪ものは配役がリアルでないとしらけるのだが、まったく見事である。山城圭吾役の菅田将暉、真相に迫る熱血刑事の小栗旬、そして不気味な犯人のFukase。これに加えて先輩刑事の中村獅童、編集者の中尾明慶もいい雰囲気。

 人気漫画の映画化が多いので、これもそうかと思ったら、オリジナルストーリーであるとのこと。仲のいい家族が次々に標的にされるのは『レッド・ドラゴン』を思わせる。

 

キャラクター

2021

監督:永井聡

出演:菅田将暉Fukase高畑充希中村獅童小栗旬中尾明慶松田洋治宮崎吐夢岡部たかし橋爪淳小島聖、見上愛、テイ龍進、小木茂光