シネコラム

第301回 サウンド・オブ・ミュージック

第301回 サウンド・オブ・ミュージック

昭和五十年九月(1975)
大阪 梅田 梅田スカラ座


 出だしからして、圧倒される。オーストリアザルツブルグの街並み、そして山々の風景、丘の上の小さな点のような人影がだんだん近づき、だんだん大きくなって、それがいきなり大きく手を広げて歌い出すのだ。主題歌を。
 タイトルが出て、ブロードウェイミュージカルらしく主要曲目のメドレー。
 時代は一九三〇年代、ナチスドイツによる併合直前のオーストリア
 修道女志願のマリアは歌が好きで、型破り。修道院長の勧めで町の名士フォン・クラップ大佐の七人の子供の家庭教師となる。厳格な大佐の軍隊式教育で遊びを禁じられている子供たち。最初はマリアを拒絶していたが大佐の留守中、音楽によってマリアと打ち解け、仲良くなる。婚約者の男爵夫人とともにウィーンから戻った大佐は、子供たちを自由に遊ばせるマリアに立腹するが、子供たちの歌声を聴いて、気持ちを改め、マリアを許す。男爵夫人は大佐とマリアの間に愛が芽生えているのを直感し、身を引いてウィーンに帰っていく。
 やがて、ナチスドイツによるオーストリア併合。反ナチスの大佐は新妻マリアと子供たちと、山を越えてスイスへと亡命する。
 ともかく、曲がすべてすばらしい。主題歌の『サウンド・オブ・ミュージック』はもとより、『ドレミの歌』『私のお気に入り』『もうすぐ17才』『ひとりぼっちの羊飼い』『エーデルワイス』など名曲ぞろい。
 トラップ一家は実在しており、アメリカへ亡命後、家族で合唱団を作り、マリア・フォン・トラップの手記が戦後、西ドイツで映画『菩提樹』となり、ブロードウェイでミュージカルの舞台となり、それをさらに映画化したのがこの『サウンド・オブ・ミュージック』なのである。ジュリー・アンドリュースの歌声なくしては成立しないような映画ではあるが、個人的な好みでいえば、私は男爵夫人のエリノア・パーカー、その女神のごとき美しさに惹かれるのだ。


サウンド・オブ・ミュージック/The Sound of Music
1965 アメリカ/公開1965
監督:ロバート・ワイズ
出演:ジュリー・アンドリュースクリストファー・プラマーエリノア・パーカーリチャード・ヘイドンペギー・ウッド

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