シネコラム

第302回 ジョジョ・ラビット

第302回 ジョジョ・ラビット

令和二年一月(2020)
六本木 20世紀フォックス試写室


 第二次大戦中、アドルフ・ヒトラーに率いられたナチスドイツは、周辺国を侵略し、民族浄化と称してユダヤ人の大量虐殺をすすめていた。
 ヒトラーユーゲントは国内の十歳以上の青少年による組織で、祖国愛とアーリア至上主義、ヒトラー崇拝などを教え込まれた。
 十歳になった少年ジョジョは、ヒトラーユーゲント入隊に期待しながらも不安にかられていた。彼が困ったときに現れて助言するのが、だれの目にも見えない親友アドルフ・ヒトラーの幻影なのだ。戦地で消息を絶った父親の身代わりに、ジョジョが心の中で作ったのかもしれない。
 アドルフに励まされ、ジョジョボーイスカウトのようなユーゲントの訓練やキャンプを楽しむ。背景に流れるビートルズの曲。が、ウサギを殺すように命令されてできず、以後、ジョジョ・ラビットとあだ名されてしまう。
 戦時中の暮らしがコメディタッチで描かれてはいるものの、軍事訓練の事故で自宅療養、気丈で明るい母とふたりで町を散歩していると、いきなり路上にぶらさげられた市民の死体。反ナチ運動の活動家やユダヤ人支援者が見せしめのために、さらされているのだ。
 ジョジョは母が留守のとき、二階で不審な物音を耳にし、屋根裏の隠し戸棚の中にひとりの少女を発見する。母が密かに匿っているユダヤ人のエルサだった。
 十歳のヒトラー崇拝者とハイティーンのユダヤ少女の戦時下の交流が始まる。
 母親がスカーレット・ヨハンソン、訓練所の大尉がサム・ロックウェル。そして監督のタイカ・ワイティティ自身が幻影のアドルフ・ヒトラーを演じている。『サウンド・オブ・ミュージック』同様、登場人物がみな英語を話すが、特に違和感はない。
 戦争末期、ヒトラーユーゲントの子供たちの多くが戦闘に駆り出され、命を落としたとのこと。


ジョジョ・ラビット/Jojo Rabbit
2019 アメリカ/公開2020
監督:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイヴィス、トーマシン・マッケンジースカーレット・ヨハンソンサム・ロックウェルタイカ・ワイティティレベル・ウィルソン