シネコラム

第268回 不機嫌な赤いバラ

第268回 不機嫌な赤いバラ

平成七年四月(1995)
池袋 文芸坐

 

 シャーリー・マクレーン出演の映画はたくさんあるが、私の好みはほとんどがコメディなのだ。『愛と追憶の日々』などシリアスな作品にはさほど興味がないし、真面目に神秘体験や輪廻転生を主張するシャーリーはどうでもいい。
 昔から美人というより可愛い女が似合うシャーリー・マクレーン、四十代の『チャンス』から八十代の『あなたの旅立ち、綴ります』まで、年齢を重ねてもいつまでもお茶目でチャーミングである。
 ニコラス・ケイジとの共演で元大領領の未亡人を演じた『不機嫌な赤いバラ』は五十代の終りから六十代にかけてだろうか。これもまた、私の大好きな一本だ。
 シークレットサービスの有能な警護官ダグはオハイオの田舎町に住む元大統領夫人テスの警護任期が終了し、喜びいさんでワシントンへ戻ると、テスから大統領に直接要請があって、任務の継続を依頼される。大統領命令を断ると一生出世と縁のない部署に回されるので、仕方なくオハイオへ引き返す。
 世間から忘れられた元大統領夫人などに事件が起こるはずもなく、退屈な毎日の繰り返し、その上、テスはわがままで意地が悪くシークレットサービスのメンバーを召使いのようにこき使う。やれゴルフに連れていけ、やれオペラが見たい、やれ朝食を持ってこい。
 あまりのことにささやかな反抗を試みると、すぐに大統領に言いつけられて、電話で叱責される始末。
 なんて憎たらしいと思っていると、ある日、任務を離れてふたりだけでじっくり話す機会があり、お互いの悩みなども語り合い、いつしか打ち解ける。
 が、それも束の間、テスを巻き込む大きな事件が起きて、なりふりかまわず、彼女のために命がけで奮闘するダグであった。


不機嫌な赤いバラ/Guarding Tess
1994 アメリカ/公開1995
監督:ヒュー・ウィルソン
出演:シャーリー・マクレーンニコラス・ケイジ、オースティン・ペンドルトン、エドワード・アルバートジェームズ・レブホーンリチャード・グリフィス

 

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