シネコラム

第243回 バトルランナー

第243回 バトルランナー

昭和六十二年十二月(1987)
大阪 難波 南街文化

ターミネーター』で一躍売れっ子となったシュワルツェネッガー、一九八〇年代後半から次々とアクション映画に主演している。中でも私が好きなのがリチャード・バックマンことスティーブン・キング原作の『バトルランナー』である。
 近未来の二〇一七年。国民は政府にしめつけられ、TVだけが唯一の娯楽。人気番組『ランニングマン』は刑務所から凶悪犯をひとり選び、地下の競技場で人気スターのハンターたちがこれを追い詰め、退治して喝采を浴びるという生番組。凶悪犯が無事に逃げおおせてゴールに至れば、賞金を貰って無罪放免となる。が、ほとんどは途中でなぶり殺し。
 獲物が弱すぎると殺戮ショーは盛り上がらない。そこで選ばれたのが市民虐殺を命じる上司に反抗して無実の罪で投獄されている元警官のベン。
 番組プロデューサーで司会も兼ねるお笑い芸人デーモン・キリアン、押し付けがましく軽薄で図々しい権力者。
 元警官のベンは大量殺人鬼として紹介され、正義のハンターがこの悪人を退治し、その悲惨な最期をみんなで楽しむ、そのはずだった。
 ところが、シュワルツェネッガーなのである。簡単にはやっつけられず、反撃して、ハンターの息の根を止めてしまう。スタジオ内の客席は水を打ったように静まりかえり、そこへ二番手のハンターがまた颯爽と登場し、ベンと対決。これもまた、返り討ち。予期せぬなりゆきに司会者は大あわて。観衆はいつしか、ハンターよりも無敵の殺人鬼シュワルツェネッガーを応援しているのだ。次々と現れるハンターをいかに倒していくか。そして、下劣な司会者がくりだす汚い手。
 当時からアメリカのTV番組は大衆をあおる偉そうな人気司会者によって成り立っていたのだろうか。思えば、今の日本のバラエティも似たようなものだ。

 

バトルランナー/The Running Man
1987 アメリカ/公開1987
監督:ポール・マイケル・グレイザー
出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、マリア・コンチータ・アロンゾ、リチャード・ドーソン、ジェシー・ベンチュラ、ヤフェット・コットー

 

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