シネコラム

第244回 デス・レース2000年

第244回 デス・レース2000年

平成二十九年八月(2017)
新宿 シネマカリテ

スパルタカス』や『グラディエーター』に描かれるように、古代ローマの昔から、人は娯楽として死の格闘を楽しんでいた。現代でもスポーツ観戦、プロレスやボクシングやカーレースに熱中する人は多い。
 私は生のスポーツにはそれほど関心ないのだが、アクション映画は大好きで、古代ローマの観衆に通じるのかも知れない。
デス・レース2000年』は一九七七年の公開だが、当時はこんな作品があったことを知らず、その後、観た人から面白いという話は聞いていたので、ぜひとも観たいと思っていたが、なかなか機会がなかった。
 平成の世になり、ジェイソン・ステイサム主演でリメイクの『デス・レース』が公開された。近未来、犯罪は増加する一方。民営化された刑務所では、収益を上げる方法として、凶悪犯に死のレースをやらせて、TVで放送し視聴率を稼ぐ。『バトルランナー』に近い内容だった。
 そして、ようやくオリジナルの『デス・レース2000年』が新宿のシネマカリテでリバイバル公開された。これがリメイクとは全然違うのだ。
 近未来の西暦二〇〇〇年。大統領の推奨で五組のレーサーがスピードと殺人を競うという人気レースが開催される。レース中、路上でうろうろしている通行人を轢き殺すと点数が加算され、レーサーたちは隙あらば、お互いの命を狙いあい、殺せば殺すほど高得点になるという究極のゲーム。超B級低予算のブラックユーモアである。
 主演はデヴィッド・キャラダイン、悪役に無名時代のシルヴェスター・スタローン。CGのない時代の特撮は味わい深く懐かしい。お金をかけてスターを集めたリメイクよりも、やっぱり元祖のほうがずっと面白いのだ。製作はロジャー・コーマン、さすがコーマン帝国
 一九七五年にはずっと未来であった二〇〇〇年、いつしか過去になってしまった。

 

デス・レース2000年/Death Race 2000
1975 アメリカ/公開1977
監督:ポール・バーテル
出演:デヴィッド・キャラダイン、シモーネ・グリフェス、シルヴェスター・スタローン、メアリー・ウォロノフ、ロバータ・コリンズ、マーティン・コーヴ