シネコラム

第209回 古川タクのアニメおもちゃ箱

第209回 古川タクのアニメおもちゃ箱

平成十一年十月(1999)
東中野 BOX東中野

 

 うちの子供が幼い頃、NHKの幼児番組「おかあさんといっしょ」や「みんなのうた」を、私もいっしょになって、いつも見ていた。
 ちょうどその頃、財津和夫の歌う『切手のないおくりもの』が「みんなのうた」で放送され、アニメーションが古川タクだったのだ。
 古川タクの短編アニメを集めた『古川タクのアニメおもちゃ箱』が東中野のミニシアターBOX東中野(後にポレポレ東中野)で上映されることになり、家族で観に行った。
 プログラムには『切手のないおくりもの』は入っていなかったが、それでも、わざわざ東中野まで三人の子供を連れて見に来てよかったと思える内容だった。
 どの絵も軽く描かれているが、安直でなく、奥が深い。何よりも見ていて気持ちがいい。
 玉子頭を叩くとひびが入る『ヘッドスプーン』
 食べ物と芸術と乗り物の進歩をリンゴを食べた原始人が一瞬にして見る三つの夢として描いた『スピード』
 宇宙に浮かんだ輪の中を人が歩く『美しい星』
 アニメーションの原型の連続画の円盤である『驚き盤』
 アフリカ旅行をビデオ撮影して都会の家で見る『ターザン』
 コーヒーを飲むと人の回りに動物や自動車が飛び交う『コーヒーブレイク』
 家に同居する怪獣。この家には父親がいない。ひょっとしてこの怪獣が父親か。その眠り続ける怪獣の『スリーピー』
 そして『東京物語』をヒントにした『上京物語』。子供の住む東京へやって来た両親がしばらく観光を兼ねて滞在する。路上の自動販売機で缶飲料を買うと、機械が「アリガト、アリガト」と声を発するが、その発音が『東京物語』の東山千栄子にそっくり。
 大爆笑ではなく、子供向きでもない、大人が楽しめるほのぼのアニメーションだ。

 

古川タクのアニメおもちゃ箱
1972~1999
監督:古川タク
アニメーション