シネコラム

第208回 テックス・エイヴリー 笑いのテロリスト

第208回 テックス・エイヴリー 笑いのテロリスト

平成十一年八月(1999)
渋谷 ユーロスペース

 

 一九四〇年代に活躍したテックス・エイヴリーの短編アニメ、Aプログラム十二本、Bプログラム十二本、計二十四本を渋谷のユーロスペースで上映。このときのユーロスペースは円山町に移転する前で桜丘町にあった。
 エイヴリーの漫画は子供の頃からTVで何度も放送されていたので、うれしい企画である。これだけのカートゥーンを大画面で続けて見ると、圧倒される。うれしいと同時に見応えありすぎて、かなり疲れた。
ドルーピー/つかまるのはごめん』囚人がどこまで逃げても横にいる警察犬ドルーピー。ビルの一室に逃げ込むとそこにドルーピーがいる。ビルから飛び降り、自動車に乗り、列車に乗り、飛行機に乗り、船に乗り、息を切らせて世界の果ての北極の氷の家に入ると、そこにドルーピーがいる。逆戻りするとやっぱりそこにいる。下水道の暗闇に入って息を切らせると、そこにドルーピーの目だけが光っている。
『呪いの黒猫』は子供の頃にTVで見たのをよく覚えている。チビ猫をいじめる悪犬。その悪犬の前を黒猫が通り過ぎると、不運にも物が落下して悪犬を直撃する。電信柱に追い詰められたチビ猫。悪犬が電線を伝わって迫る。どうなるのか。そこへ風船にぶらさがった黒猫が浮かんで横切る。とたんに悪犬を襲う落下物。
『ある殺人』刑事が動くなと叫ぶと、画面の下隅を通り過ぎる黒い影。映画館のスクリーンで見なければわからないギャグ。
『太りっこ競争』ずば抜けて面白い。猫がやせたカナリアを成長剤で大きくして食べようとすると、大きくなりすぎる。そこで自分も巨大化し、手違いで鼠や犬まで大きくなり、相手よりも大きくなろうと薬を飲み続け、山や谷をひとまたぎで走り抜け、ついには地球規模の大きさとなる馬鹿馬鹿しさ。

 

テックス・エイヴリー 笑いのテロリスト
1942~1952 アメリカ/公開1999
監督:テックス・エイヴリー
アニメーション