第190回 ヒッチコック
平成二十五年三月(2013)
六本木 20世紀フォックス試写室
映画監督のアルフレッド・ヒッチコック、私は子供の頃からその容貌はよく知っていた。TVの『ヒッチコック劇場』で最初と最後に解説をするのがヒッチコックだったのだ。熊倉一雄の声の吹き替えも懐かしい。
このヒッチコックをアンソニー・ホプキンスが演じたのが『ヒッチコック』、映画は懐かしの『ヒッチコック劇場』のスタイルで始まり、テーマ曲も同じである。が、ホプキンス、あんまり似てないな、と思いながらも観ていくうちに、どんどんヒッチコックそのものになってしまう。ベテランの演技力もあるだろうが、これこそ映画の魔法であろう。
時代背景は『北北西に進路を取れ』がヒットした直後。次の作品に選ばれたのが『サイコ』だった。実在の連続猟奇殺人事件を題材にしたロバート・ブロックの小説。
映画会社はそんなゲテモノに金は出さないと言う。ヒッチコックはホラーを超一流の監督が撮ったらどうなるか、やってみたい。そこで自費での『サイコ』撮影が始まるのだ。
ヒッチコックがホラー映画を作り上げていく過程も面白いが、作品を売る工夫、有能な脚本家であり編集者である妻の働きも見逃せない。
配役がきめ細かく、妻がヘレン・ミレン。ジャネット・リーがスカーレット・ヨハンソン。アンソニー・パーキンス役のジェームズ・ダーシーがあまりにパーキンスそっくりなので驚いた。そして、ヒッチコックの妄想に現れる実在の猟奇殺人鬼エド・ゲインは悪役俳優のマイケル・ウィンコット。
この映画、最初と最後が『ヒッチコック劇場』のスタイルなので、ラストの解説に思わずにやり。『サイコ』の次は『鳥』
ちなみにTVの『ヒッチコック劇場』でどんでん返しの脚本をたくさん書いていたのが私の大好きなミステリ作家のヘンリー・スレッサーである。
ヒッチコック/Hitchcock
2012 アメリカ/公開2013
監督:サーシャ・ガヴァシ
出演:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、ジェシカ・ビール、ジェームズ・ダーシー