シネコラム

第154回 シャーロック・ホームズVSモンスター

第154回 シャーロック・ホームズVSモンスター

平成二十三年三月(2011)
渋谷 シアターN渋谷

 

 二〇一一年三月の大地震発生の直後、東京の盛り場は新宿も渋谷も灯が消えたような有様だった。ちょうどその時期、シアターN渋谷で開催されたのが「アサイラム祭」と称する特集上映である。
 アサイラムというのはハリウッド大作や話題作を低予算で真似て作る会社で、タイトルもポスターの絵柄も有名作品と間違えそうだが、内容は限りなく超B級なのだ。「アサイラム祭」でのラインナップ。『タイタニック2012』『ターミネーターズ』『アバター・オブ・マーズ』『バトルフィールド・アビス』『メガ・シャークVSクロコザウルス』『メガ・ピラニア』などなど。タイトルだけで興味をそそる作品がずらり。
 その中で私の目を引いたのが『シャーロック・ホームズVSモンスター』である。ホームズ好きの私が見逃すわけがない。期間中、一日だけ、それも夜一回だけのレイトショーのみ。観る前から覚悟はできていたが。
 一九四〇年、ドイツ軍の空襲を受けるロンドン。老いたワトスンが若い家政婦に聞かせる昔話。以前にもロンドンが燃えたことがあった。なかなかいい出だしだ。場面は変わって一八八〇年代。女王陛下の金塊を積んだ船がタコのような海の怪物に襲われ沈む。それを解決しようと乗り出すのが、ホームズとワトスン。ロンドンに恐竜が現われ人を襲うが、ホームズはたいした推理もせずに真相に辿り着き、怪事件の犯人と対決する。最後は火を吹くドラゴンと気球に乗ったホームズとの死闘。ロンドンが火の海となる。
 ポスターの絵柄も映画の内容もガイ・リッチーのホームズを意識的に真似ており、ホームズは鹿撃ち帽もインバネスも着用せず、ワトスンよりも背が低い。おまけにアイアンマンのような金属で覆われた怪人まで登場する。怪物のCGはこの上なく稚拙。
 無名俳優でも低予算でも、趣向ひとつで面白くなるのだが、『シャーロック・ホームズVSモンスター』はそこまで考えていない。オリジナルタイトルが『シャーロック・ホームズ』ビデオ店で客がロバート・ダウニーJr.の映画と間違えるのを見越しているのだろう。が、こんな映画をさえ映画館で観られたことが私はこの上なくうれしい。

 

シャーロック・ホームズVSモンスター/Sherlock Holmes
2009 アメリカ/公開2011
監督:レイチェル・ゴールデンバー
出演:ベン・サイダー、ギャレット・デヴィッド・ロイド、ウィリアム・ハウ

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