第131回 ちょんまげぷりん
平成二十三年一月(2011)
目黒 目黒シネマ
時間SFの中でも私はタイムスリップものが大好きである。『ちょんまげぷりん』は江戸時代の武士が現代にタイムスリップする物語。
巣鴨に住むシングルマザー。会社勤めと子育てとで必死に生きている。ある朝、彼女の前にひとりの武士が出現する。なにかの宣伝、時代劇を撮影中の俳優だろうか。すると、彼は名乗り出る。
「木島安兵衛、直参でござる」
文政年間、ひとりの幕臣が巣鴨村の田園を訪れた。旗本なのだが、無役の小普請組。どうかお役につかせてくださいと農道にあるお地蔵様に手をあわせると、いつの間にか不思議な世界に迷い込んだというのだ。
彼が迷い込んだ世界は二十一世紀、平成の東京。出会った母子の親切に甘え、彼はマンションに厄介になり、家事を引き受けることに。
男社会であった江戸から、男女が共に働く東京を見て、驚くやら憤慨するやら。でも、実は現代もまた、江戸と変わりない男社会なのだとの皮肉がさらり。
やがて、木島安兵衛はお菓子作りに才能を発揮し、様々なケーキを作りあげ、一流洋菓子店に就職。そうなると、家事と仕事の両立が難しくなり、子供の相手もできなくなってジレンマ。
こういう荒唐無稽な物語、細部がリアルでないと嘘臭くて、見ていられないが、細かいところまで目が行き届いている。安兵衛役の錦戸亮も立派な武士に見える。歩き方もちゃんと江戸時代人になっている。江戸時代の武士は運動会の行進みたいに手を振って歩かなかったのだ。
ちょんまげぷりん
公開2011
監督:中村義洋
出演:錦戸亮、ともさかりえ、今野浩喜、佐藤仁美、鈴木福、忽那汐里、堀部圭亮、中村有志、井上順