シネコラム

第118回 マチェーテ

第118回 マチェーテ

平成二十三年四月(2011)
新橋 新橋文化

 

 ダニー・トレホの名前は知らなくとも、一度見たら忘れられないその面構え、悪役に欠かせない顔である。
 最初にトレホの印象が強く残ったのが『コンエアー』だった。囚人たちを飛行機で護送するという犯罪アクションで、囚人のジョン・マルコビッチスティーブ・ブシェーミに混じって、一際凶悪な顔のトレホだった。
 ロドリゲスとタランティーノが作ったグラインドハウスの二本立て『プラネットテラー』と『デスプルーフ』に架空の予告編『マチェーテ』が遊びで挿入されていて、主演が絶対にありえない悪役専門のダニー・トレホだったので大受け。そして、さらに驚いたことに実現したのだ。『マチェーテ』の本編が。
 メキシコとテキサスの国境。移民を搾取する悪徳企業。国境で不法移民を狩り立て、面白半分に殺してまわる自警団。そのハンティングに加わるタカ派上院議員。彼らと金の力で密接に結びついているメキシコの麻薬組織。
 元メキシコの凄腕捜査官マチェーテは、妻子を麻薬組織に惨殺され、今はテキサスで不法移民労働者として暮らしている。彼にタカ派議員暗殺の話が持ちかけられる。
 移民嫌いの議員は、不法移民の取り締まりを強化し、国境の鉄条網に電気を通して、彼らを阻止するよう主張している。わが国の富をくすねに来るメキシコ人たちを叩き出せ。
 不法移民がいなくなれば、安くこきつかって儲けている企業が成り立たないので、だから暗殺。でも、これには裏があって。
 タカ派議員がロバート・デニーロ。こいつが悪運強くて、しぶとい。メキシコの麻薬王沈黙シリーズのスティーブン・セガール。最後の刀をふりまわしての決闘は壮絶。
 ミシェル・ロドリゲスジェシカ・アルバなどヒスパニック系の美女も出て、思い切り楽しめた。


マチェーテ/Machete
2010 アメリカ/公開2010
監督:ロバート・ロドリゲス
出演:ダニー・トレホジェシカ・アルバロバート・デニーロミシェル・ロドリゲス、スティーブン・セガールリンジー・ローハン