第119回 大江戸りびんぐでっど
平成二十二年九月(2010)
五反田 イマジカ第二試写室
舞台の映画化というのは、以前から数多い。シェイクスピアからブロードウェイミュージカルまで、著名な人気作品はたいてい映画化されている。
だが、シネマ歌舞伎というのは舞台の映画化ではない。NHKの教育番組などで歌舞伎の舞台中継を放送することがある。つまり舞台の公演をそのまま撮影し、映画館の大画面で上映するのがシネマ歌舞伎なのだ。
歌舞伎座改装休演前、平成二十一年十二月のさよなら公演『大江戸りびんぐでっど』が、その後シネマ歌舞伎として映画館で上映された。
作者は宮藤官九郎。江戸を舞台にした歌舞伎ではあっても、現代作家、それも最先端のユニークな若手、一筋縄ではいかない。
なにしろ、歌舞伎でゾンビなのだ。
生きた死者たちが江戸の町をぞろぞろと動き回るという趣向。
干物のくさやを作るためのくさや汁、それを浴びた死人がゾンビとして甦り、江戸の町が恐怖におののく。ゾンビたちが歌ったり踊ったり、おふざけギャグもたっぷりのオカルトコメディ。
ゾンビを派遣して安く働かせるというのは、『ゾンビーノ』の影響か。
これを名門ぞろい、一流どころの歌舞伎役者の面々が思い切り演じているあたり、驚くばかり。しかも、歌舞伎の味わいもそのままに。
大江戸りびんぐでっど
2010
作:宮藤官九郎
出演:市川染五郎、中村七之助、中村勘三郎、中村福助、中村橋之助、中村勘太郎、中村扇雀、板東三津五郎