第111回 カメラを止めるな!
平成三十年の映画界、一番の話題は、なんといっても『カメラを止めるな!』の大ヒットだったろう。どこへ行っても、この話で持ち切りで、ふだん、あまり映画を観ない人たちが映画館に押し寄せた。
監督や俳優たちがお金を出し合って作った自主映画が、全国の大劇場で上映され、とてつもない観客動員数と興行収益を記録する。
ゾンビ映画である。ゾンビに変身した恋人に襲われるヒロイン。が、それは映画の制作現場であり、うまく演技できない女優に文句をつける監督。撮影は廃屋で行われているが、そこには不気味な都市伝説があり、ゾンビ映画の現場に本物のゾンビが現れ、撮影隊は次々と襲われて、襲われた者もゾンビと化す。が、ヒロイン役の女優がゾンビたちと戦い、最後まで生き残る。
なんだ、安直な自主映画だなあと思っていたら、実はこれが長い前置きなのだ。
ここからもうひとつのストーリーが始まる。あまり売れていない映画監督のところにローカルなTV局から仕事が舞い込む。条件は三つ、生放送であること、最初から最後までワンカットで撮影すること、ゾンビ映画であること。
そこでキャスト、スタッフが集められる。本番直前の俳優キャンセルなど、いろいろ問題が出て来るが、それらを乗り越えて生放送の撮影に入る。撮影中も様々なトラブルに見舞われるが、ノーカットだから止められず、そのまま進行する。それで出来上がったのが最初のゾンビ映画というわけだ。
そう思って見ると、最初の陳腐なゾンビ映画が実に面白くなる。だから、この映画を二度、三度と繰り返し見直す観客が増えて、大ヒットとなったのだろう。低予算ながら、アイディアの勝利である。