シネコラム

第110回 知らなすぎた男

第110回 知らなすぎた男

平成十年十一月(1998)
新宿 シネマカリテ2

 

 スパイコメディはけっこう好きだが、『知らなすぎた男』は中でも特に凝っていて、好きな作品である。が、『オースティン・パワーズ』ほどヒットせず、小さい映画館で地味に公開されて、ひっそりと終わったのだった。題名はヒッチコックの名作をもじったもの。
 ビル・マーレイ扮する主人公はアメリカのしがないビデオ屋の店員。自分の誕生日を祝ってもらおうと、イギリスで銀行家として成功している弟をいきなり訪ねる。この日は大事なお得意を招待してのホームパーティ。いかれた兄が口を出したら商談がぶちこわしになる。そこで、弟は話題の観客参加型演劇を予約して、兄を行かせる。
 個人向けの野外劇で、観客はスパイドラマの主人公となって、俳優相手に即興劇を演じるのだ。指定の電話ボックスで待っていると指示があり活劇が始まる仕掛け。
 ところが手違いで、本物の殺し屋にかかって来た電話を受けとってしまい、電話の指示のまま、現実のスパイ戦に巻き込まれていく。
 冷戦が終わり、英国とロシアの情報部が画策して、再び国際情勢を悪化させようとの陰謀。芝居だと信じてヒーローになりきったビデオ屋の店員。悪人たちは謎のアメリカ人の出現に、凄腕のスパイが乗り出したと大あわて。
 黒幕悪大臣の愛人を味方にして、ついに平和条約締結の会場へと乗り込み、何も知らないまま、ロシア舞踊団に混じってダンスを踊り、偶然にも英露の情報部が仕掛けた爆弾を処理して世界の危機を未然に防ぐ。
 ビル・マーレイのおとぼけぶりに大笑い。

 

知らなすぎた男/The Man Who Knew Too Little
1997 ドイツ・アメリカ/公開1998
監督:ジョン・アミエル
出演:ビル・マーレイピーター・ギャラガージョアンヌ・ウォーリー、アルフレッド・モリー