シネコラム

第105回 新シャーロック・ホームズおかしな弟の冒険

第105回 新シャーロック・ホームズおかしな弟の冒険

昭和五十四年八月(1979)
大阪 堂島 毎日文化ホール

 

 シャーロック・ホームズにマイクロフトという兄がいるのはよく知られている。ホームズ以上に頭が切れ、あまり活動的ではなく、政府の特殊な職務に就いているらしい。実はシャーロックにはマイクロフト以外に兄弟がもうひとりいた。というのがアメリカのコメディ『新シャーロック・ホームズ おかしな弟の冒険』である。
 あまりぱっとしない弟シガーソンを演じるのは、メル・ブルックス監督の『ヤングフランケンシュタイン』で注目されたジーン・ワイルダー。この『新シャーロック…』では監督、脚本、主演をこなしている。
 時代は一八九一年。外務大臣が重要書類を何者かに盗まれる。名探偵シャーロック・ホームズとワトスン医師は旅行中で留守。そこで弟のシガーソン・ホームズが事件を捜査することに。
 相棒はワトスンならぬスコットランドヤードのサッカー警部。演じるのは『ヤングフランケンシュタイン』で助手のイゴールだった目玉の飛び出たマーティ・フェルドマン
 ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』が全編アクション映画なら、この『新シャーロック…』はドタバタコメディ。かなりベタな笑いだったように思う。
 タキシードのふたりが後ろ向きになると、服が大きな刃物で切り裂かれていて、背中とお尻がそろって裸になっている場面とか。
 そして、この映画には全然頭脳の鋭くなさそうな、まるで道化役者のような悪の黒幕モリアーティ教授も出てくるのだ。
 シガーソンという名前、ライヘンバッハの滝でモリアーティ教授と対決した後、姿を隠していたホームズがノルウェイ人探検家としてチベットを旅行したときの偽名、それがシゲルソンだった。ドタバタとはいえ、かなり正典に通じている。

 

シャーロック・ホームズおかしな弟の冒険/The Adventure of Sherlock Holmes‘ Smarter Brother
1976 アメリカ/公開1977
監督:ジーン・ワイルダー
出演:ジーン・ワイルダー、マデリーン・カーン、マーティ・フェルドマン

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