第53回 バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
平成二十七年五月(2015)
京都 新京極 ムービックス京都
マイケル・キートンがバットマンを演じたのはティム・バートン監督の『バットマン』と『バットマンリターンズ』の二作だけで、その後は作品に恵まれたとは言い難く、ぱっとしなかった。
そして『バードマン』である。
この映画、マイケル・キートンのあて書きなのだ。主人公のリーガンはハリウッドのSFアクション『バードマン』でヒーローを演じたスター俳優。が、時は流れ、今は初老となり、落ち目である。
リーガンはしんみりと言う。同じ飛行機にジョージ・クルーニーと乗り合わせたとき、もしも墜落したらと思うとぞっとする。翌日の新聞にはクルーニーの写真だけが大きく出ているんだ。
今はハリウッドを離れて、ブロードウェイの舞台に取り組んでいる。
レイモンド・カーヴァーの小説を自ら戯曲化し、主演と演出で再起をはかろうとするのだが、次々とトラブルが続く。
事故で降板した俳優の代役に選んだベテランは、舞台をぶちこわしてまで、自分を売り込もうとする。
酒場で会った劇評家は辛辣で、ハリウッドの活劇で名前が売れたからといって、ブロードウェイでは通用しない。容赦なく叩き潰すと宣言。
追い詰められた彼の前には、かつて自分が演じたヒーロー、バードマンの幻影が現れる。
映画と演劇、娯楽と芸術、人気と実力といった対比が面白く、それを等身大で演じるマイケル・キートンが見事である。
バードマンあるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)/Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance)
2014 アメリカ/公開2015
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:マイケル・キートン、ザック・ガリフィアナキス、エドワード・ノートン、エマ・ストーン、ナオミ・ワッツ