シネコラム

第52回 バットマン

第52回 バットマン

平成二年十月(1990)
池袋 文芸坐

 

 私が子供の頃は、スーパーマンバットマンなど、アメリカンコミックスを原作にした実写のヒーロー活劇がTVで放送されていた。子供の頃は喜んで見ていたが、大人になると、単純で幼稚な勧善懲悪は物足りない。
 ところが、この子供だましが、豪華キャストで手の込んだ大作仕立てになっていると、だまされても悔いはない。さすがにティム・バートン監督である。
 ゴッサムシティで強盗を働いたチンピラの前に黒ずくめ、蝙蝠のコスチュームの怪人が現れ、叩きのめす。これがバットマン
 一方、犯罪組織の幹部ジャックは親分グリソムの情婦に手を出したため、怒りを買って罠にはめられる。押し入った化学工場で警官隊と争うが、そこへ現れたバットマンに追われ、廃液の中に落ち、一命を取り止めるも、醜く変わりはてた自分をピエロの白塗りで飾り、残忍な笑う怪人ジョーカーとして甦る。ジョーカーは笑って踊りながらグリソムを殺し、組織を自分のものにする。
 バットマンの謎を調査する新聞記者と女性カメラマンが大富豪ブルース・ウェインのパーティに招かれる。ウェインが実はバットマンである。
 その昔、目の前で両親を通りすがりのチンピラに殺され、復讐のために巨万の富を使って科学技術を駆使し、悪をやっつける怪人バットマンとなったのだ。その親の仇こそ、若き日のジョーカーであった。
 ジョーカーは自分を醜い姿に変えたバットマンに復讐するため、バットマンが思いを寄せる女性カメラマン、ヴィッキーを誘拐する。
 バットマンと大富豪ウェインの苦悩を演じ分けるマイケル・キートン、不気味なジョーカーを楽しむジャック・ニコルソン、美女ヴィッキーのキム・ベイシンガー、組織の親分がジャック・パランス。演技派の大物スターによる子供だましは最高だ。

 

バットマンBatman
1989 アメリカ/公開1989
監督:ティム・バートン
出演:マイケル・キートンジャック・ニコルソンキム・ベイシンガージャック・パランス