シネコラム

第669回 フォールガイ

飯島一次の『映画に溺れて』

第669回 フォールガイ

令和六年九月(2024)
立川 シネマシティ2

 

 映画を題材にした映画は、たいてい映画ファンの心をそそる。
 フォールガイとは落ちる男、あるいは身代わりといった意味があり、映画界のスタントマンを現す用語らしい。この映画はタイトルそのまま、スタントマンが主人公である。
 ライアン・ゴズリングふんするコルト・シーバースは不死身を自負するベテランで、どんな危険なシーンも厭わず見事にこなし、重宝がられている。主演スターのトム・ライダーからの要求で、落下シーンを撮り直し、事故で重症を負う。それを機に映画界を去り、カメラオペレーターをしていた恋人ジョディの前からも姿を消す。一年半後、駐車係をしているコルトにプロデューサーのゲイルから連絡が入る。監督に昇格したジョディのデビュー作にトムが主演するので、スタントマンを引き受けてほしいとの依頼。
 宇宙SF『メタルストーム』のオーストラリアでの撮影。監督のジョディは自分の前から黙って消えたコルトを冷たくあしらう。ゲイルがコルトを呼び寄せたのは、実はわけがあり、主演のトムが行方不明なので、探してほしいとのこと。仕方なく首を突っ込んだために次々と窮地に陥るコルト。襲撃者との立ち回り、カーチェイス、高所からの飛び降り、ボートの爆破、ヘリコプターでの乱闘。映画ではなく現実の派手な危険が彼を襲う。
 映画界の話なので、登場人物の会話に『ロッキー』『ワイルドスピード』『メメント』『ノッティングヒルの恋人』『逃亡者』『テルマ&ルイーズ』など、映画のタイトル、俳優名、名セリフが飛び出し、知っていると思わずにんまりしてしまう。ジョディが監督する『メタルストーム』は一九八〇年代に実際に作られたB級宇宙活劇と同題名。
 スターのトムを演じるのは『キックアス』のアーロン・テイラー=ジョンソン。ジョディ役がエミリー・ブラント。エンドロールに流れる本作のスタント撮影場面は本物。
 一九八〇年代のTVシリーズに『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』があり、リー・メジャース演じる主役のスタントマンの名がコルト・シーバースだった。

フォールガイ/The Fall Guy
2024 アメリカ/公開2024
監督:デヴィッド・リーチ
出演:ライアン・ゴズリング、エミリー・ブラント、アーロン・テイラー=ジョンソン、ハンナ・ワディンガム、テリーサ・パーマー、ステファニー・スー、ウィンストン・デューク

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