シネコラム

第632回 ゴジラ-1.0

飯島一次の『映画に溺れて』

第632回 ゴジラ-1.0

令和五年十一月(2023)
新宿歌舞伎町 TOHOシネマズ新宿

 

 ゴジラを観るなら、やはりここだと思い、ビルの屋上から巨大なゴジラが顔を出している新宿歌舞伎町のTOHOシネマズで鑑賞した。
 第一作は終戦からさほど年月の経っていない一九五四年に作られ、ヒットしてシリーズ化し、その後、キングコングやモスラやキングギドラと対決したり、新シリーズやアメリカ版や『シン・ゴジラ』まで、様々なリメイクや続編や変種が登場したが、六十九年めの『ゴジラ-1.0』は第一作以前の一九四五年、戦争末期から始まる。
 特攻隊員の敷島は戦闘機の故障を理由に大戸島に不時着する。が、機体に不備な個所は見つからず、虚偽による特攻逃れを整備兵たちに見破られる。その夜、島の言い伝えでゴジラと呼ばれる恐竜の形をした怪物が現れ、整備兵たちを襲い、大部分が殺される。
 終戦後、生き残った敷島は瓦礫の東京で燃え尽きた家に戻り両親の死を知る。修復したあばら家に子連れの若い女性典子が行きがかりで同居することになり、敷島は生活のため沿岸での機雷撤去の作業員として働くが、近海で不審な災害が続出する。
 大戸島にいた伝説のゴジラが米軍の核実験の影響で巨大化し、船も人も破壊しているのだ。やがてゴジラは日本の本土に上陸し、空襲からようやく立ち直りかけた東京に襲いかかる。当時の日本はアメリカの支配下にあり、米ソの均衡を保つために米軍の援助なしに兵力のないまま独自に無敵の怪物と戦わなければならない。いったいどのような方法をとるのか。
 銀座でのゴジラ襲撃の場面はオリジナル版をかなり意識しており、電車が嚙み砕かれたり、実況中継のマスコミ人が犠牲になったり、大戸島のゴジラ伝説もそのまま引き継がれ、オマージュとして描かれている。終戦直後の東京の風景も見事に再現され、男女の服装や髪型も一九五四年のオリジナル版に近い。男性はほぼ全員が短髪だが、吉岡秀隆の野田だけがぼさぼさの長髪で、世間の常識からはずれた変人なのは『ALWAYS 三丁目の夕日』の茶川さんである。さすが山崎貴監督、芸が細かい。

ゴジラ-1.0
2023
監督:山崎貴
出演:神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介

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