シネコラム

第648回 ARGYLLE/アーガイル

飯島一次の『映画に溺れて』

第648回 ARGYLLE/アーガイル

令和六年三月(2024)
立川 シネマシティ

 

 アーガイルチェック模様から007を思わせる出だし。タフでスマートでおしゃれなスパイ、その名もアーガイルが謎の美女に接触し、ギリシアの港町で追跡劇。アーガイルの上司である諜報機関の長官が悪の組織のボスと同一人物であることが判明する。国の要所に潜伏してテロを行う悪人たちの正体を暴くため、アーガイルが次に打つ手は。
 というのがスパイ小説『アーガイル』シリーズ第四作の結末で、アクション場面の展開は作者のエリー・コンウェイの講演会での朗読だった。
 家に閉じこもって第五作の執筆を終えるエリー。さっそくそれを読んだ母から連絡があり、さらなる結末を話し合うため、エリーは飼い猫アルフィと列車に乗り、両親の家に向かう。列車内で図々しく同席す胡散臭い男。彼はエリーが『アーガイル』の作者と知り、自分は本物のスパイと名乗る。が、スパイは嘘をつくとも。そこへ次々と襲撃者が現れ、男は敵を倒してエリーを救い、ふたりで列車から飛び出す。
 エイダン・ワイルドと名乗るスパイは忠告する。エリーが悪の組織から狙われていると。なぜなら、エリーの書いた小説『アーガイル』が見事に悪の組織の秘密を暴いているから。そして悪の組織を壊滅させるリストの入手先こそが、『アーガイル』第五作に書かれている。あまりにもぴったりすぎる偶然に、国家の諜報機関も悪の組織も同時に目をつけたというのだ。エリーはエイダンに連れられて自作小説の通りロンドンに飛ぶが、危険を感じて両親と再会、そこからスパイアクションそのものの目まぐるしい展開となる。
 なにゆえ、イアン・フレミング風のエリーのベストセラー小説がほんもののスパイの世界の裏側を描いていたのか。これ以上はネタバレ厳禁。
 エリーを演じたブライス・ダラス・ハワードは『ヘルプ』で南部の若奥様、すらりと長身の美人で、冷酷で意地悪な役だった。ところが、今回の女流作家エリー・コンウェイは、かなりふっくらと太めで、ウェイトレスからスパイ作家に転向した気のいい愛猫家。エイダン役のサム・ロックウェルと、最後はダンスを踊りながら銃をぶっぱなすことに。

ARGYLLE/アーガイル/Argylle
2024 イギリス・アメリカ/公開2024
監督:マシュー・ヴォーン
出演:ブライス・ダラス・ハワード、サム・ロックウェル、ブライアン・クランストン、キャサリン・オハラ、ヘンリー・カヴィル、サミュエル・L・ジャクソン

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