シネコラム

第622回 クッキー・フォーチュン

飯島一次の『映画に溺れて』

第622回 クッキー・フォーチュン

平成十二年六月(2000)
飯田橋 ギンレイホール

 

 私は女優の好き嫌いがけっこうあって、リヴ・タイラーのような長身で愛嬌のある美女は毒婦を演じていても大好きだが、常に不機嫌そうなグレン・クローズは『ガープの世界』にしろ『危険な情事』にしろ『ザ・ペーパー』にしろ、どれも好きになれない。
 そのグレン・クローズが主演し、自分の悪企みがわが身に返ってひどい目にあう『クッキー・フォーチュン』は好きである。
 田舎で金持ちの老婆クッキーが拳銃自殺する。たまたま訪問したふたりの姪、カミールとコーラの姉妹が発見するが、誰に対しても命令口調の横柄な姉カミールは伯母クッキーを嫌っていて、素人芝居の公演で使う小道具を借りに寄っただけ。親戚が孤独を理由に自殺などしては恥ずかしいと体面を重んじ、妹に命じて事実を隠蔽する。遺書を処分し、強盗の仕業に見せかけるために、部屋を荒らし、死体から銃をもぎとり庭に捨てる。
 状況からこの家に出入りする親切な黒人ウィリスが犯人にされ、逮捕されてしまう。それでも素知らぬ顔のカミール。
 一方、コーラの娘エマは善良な黒人のウィリスが犯人とは思えず、いっしょに留置場へ入ったりする。保安官も釣り仲間のウィリスを犯人とは思っていない。
 カミールは立ち入り禁止の伯母の家に行き、画策するが、それが裏目に出る。強盗に見せかけるために部屋を荒らした時、怪我をしたまま捨てた銃に自分の血が付着していた。銃を捨てるところも隣人の少年に見られていた。狂言であることを絶対に言うなと命じられた妹コーラはそのまま姉の言いつけを守る。おかげで、カミールは財産目当てに伯母を殺した真犯人となってしまい、刑務所で一生を送る。
 意地の悪いカミールのグレン・クローズがひどい目にあうので、めでたしめでたし。すかっとした。姉の言いなりのコーラがジュリアン・ムーア。そして、コーラの娘の気のいいエマがリヴ・タイラー。監督はロバート・アルトマンである。

 

クッキー・フォーチュン/Cookie’s Fortune
1999 アメリカ/公開2000
監督:ロバート・アルトマン
出演:グレン・クローズ、リヴ・タイラー、ジュリアン・ムーア、クリス・オドネル、チャールズ・S・ダットン、パトリシア・ニール、ネッド・ビーティ、コートニー・B・ヴァンス、ドナルド・モファット、ライル・ラヴェット

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