第616回 奥さまは魔女
平成十七年九月(2005)渋谷 渋谷TOEI②
アメリカのTVコメディ『奥さまは魔女』は一九六四年に製作され、日本では一九六六年に第一回目から放送された。当時中学生だった私は毎回夢中で見ており、同級生もほとんど見ていたと思う。雑誌の記事でサマンサ役のエリザベス・モンゴメリーが三十過ぎと知って驚いた記憶がある。中学生にとって三十過ぎの女性は相当な年配だが、TVの魔女サマンサは若々しくて美しくセクシーでもあった。ダーリン役のディック・ヨークは途中で別の俳優に代わったが、柳沢真一の吹替は忘れられない。番組は何度も再放送されており、私より若い世代にもよく知られている。エリザベス・モンゴメリーは一九九五年に六十二歳で亡くなった。
ニコール・キッドマンとウィル・フェレルの映画『奥さまは魔女』は厳密にはかつてのTVのリメイクそのままではなく、TVリメイクを作る話。落ち目なくせに偉そうな映画俳優ジャックが往年のヒット番組『奥さまは魔女』のリメイクでダーリン役が決まり、たまたま書店で見かけた鼻ピクピクの上手なイザベルをサマンサ役に抜擢するが、これが本物の魔女であったという屈折したストーリーになっている。
自分本位のジャックは演出家と脚本家に指示し、ダーリンを主役にして、サマンサよりも目立とうとするが、イザベルの魔法にへこまされ、やがてふたりは恋に落ち、ドラマ同様に結ばれる。キッドマンはエリザベス・モンゴメリーのサマンサに似ており、イザベルの父親がマイケル・ケイン、ドラマでサマンサの母親役を演じる老女優がシャーリー・マクレーンという豪華配役。だが、コメディとしてはさほど笑えず、主演のふたりはゴールデンラズベリー賞のカップル部門を受賞したとのこと。
ウィル・フェレルはミュージカル映画版『プロデューサーズ』のヒトラー崇拝の劇作家役が印象深い。『俺たちホームズ&ワトソン』ではシャーロック・ホームズも演じているそうだが、劇場未公開のため未見である。日本の喜劇俳優、田武謙三に顔が少し似ている。
2005 アメリカ/公開2005
監督:ノーラ・エフロン
出演:ニコール・キッドマン、ウィル・フェレル、シャーリー・マクレーン、マイケル・ケイン、ジェイソン・シュワルツマン、クリスティン・チェノウェス、ヘザー・バーンズ、ジム・ターナー、スティーヴ・カレル