シネコラム

第607回 アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

飯島一次の『映画に溺れて』

第607回 アバウト・タイム ~愛おしい時間について~

平成二十六年十月(2014)
京都 TOHOシネマズ二条

 

 SFの分野であるタイムトラベルは犯罪アクションになったり、コメディになったり、いろいろと使えるが、過去に戻って恋愛の失敗を修正することも可能なのだ。
 英国コーンウォールに住む青年ティムは二十一歳の誕生日に父から言われる。わが一族の男は時間を巻き戻して過去をやり直す能力がある。方法はだれもいない密室にこもって、戻りたい時を念じること。だが、未来には行けない。この能力、決して金儲けに使わないようにと忠告される。そんなことしたら、堕落して破滅するからと。
 その夏、妹の友達のシャーロットが夏休みにコーンウォールの家に滞在する。彼女が帰る日、愛を告白すると、もっと早く言ってくれればよかったのにと言われて振られる。時間を戻し、彼女がコーンウォールに来てまだ間もない頃に告白すると、そんなのは別れ際に言ってほしかったと言われてまた振られる。やり直してもままならぬ恋もあるのだ。
 ティムはロンドンで弁護士となり、出版社勤務の美人メアリと知り合い、最初はぎくしゃくしているが、時間を何度も戻し、やり直しながら恋人同士となって、やがて結婚し、娘も生まれる。妹が不幸な事故にあったので、一族の能力を妹と共有し、過去を変更すると、愛する娘が生まれない現代になっていた。微妙な受胎のタイミングが狂ったのだ。そこでまた修正。父が肺癌で余命わずかと知り、過去に戻って父と過ごす。父もまた過去に戻る能力があり、何度も戻っている。だが、死を避けることはできない。
 父は言う。毎日、一日分だけ戻って同じ日を二度過ごすのは楽しいぞ。
 ティムは今、三人の子の父親になった。子供が生まれる以前には戻らず、平凡で幸せな人生を送っている。父のように。
 ティム役のドーナル・グリーソンは名脇役ブレンダン・グリーソンの息子。メアリがレイチェル・マクアダムス、シャーロットがマーゴット・ロビー、そして父が燻し銀のごときビル・ナイである。

アバウト・タイム 〜愛おしい時間について〜/About Time
2013 イギリス/公開2014
監督:リチャード・カーティス
出演:ドーナル・グリーソン、レイチェル・マクアダムス、ビル・ナイ、リディア・ウィルソン、リンゼイ・ダンカン、リチャード・コーデリー、ジョシュア・マクガイア、トム・ホランダー、マーゴット・ロビー、ウィル・メリック、ヴァネッサ・カービー

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