第583回 プロデューサーズ(2005)
平成十八年四月(2006)渋谷 渋東シネタワー2
メル・ブルックス監督の一九六八年のコメディ『プロデューサーズ』は長らく日本では劇場公開されず、ようやく二〇〇一年に渋谷のシネマソサエティでレイトショーのみ上映された。おそらくこの年にブロードウェイの舞台でネイサン・レインとマシュー・ブローデリック主演でミュージカル化されたので、それに合わせての映画館公開であろう。
ブロードウェイのミュージカル版『プロデューサーズ』はヒットし、トニー賞で十二部門受賞。演出のスーザン・ストローマンがそのままを監督として起用され二〇〇五年に映画化される。だから、このミュージカル映画はメル・ブルックスのオリジナル版のリメイクというよりも、ブロードウェイの舞台版の映画化なのだ。
内容はオリジナル映画版とほぼ同じで、ヒットしないほうが舞台は儲かるという会計士の一言で、落ち目のプロデューサーが多額の出資金をかき集めながら、わざと一晩で打ち切られるような最低最悪の企画を立てるというもの。
最悪のハムレットが終演した劇場で観客やスタッフが歌って踊ってこきおろす最初の場面から、すべてがミュージカルとなっており、会計事務所でこきつかわれる会計士たちの苦悩や町を練り歩く老婆たちの踊りも追加される。劇中劇の最低の舞台『春の日のヒトラー』は『メル・ブルックスの大脱走』のハイル・マイセルフを連想させるが、楽曲はブルックスのオリジナルと同じ。ナチスを茶化して称える舞台はオリジナル版よりさらに豪華絢爛で、これじゃ、一晩で終わらずにヒットするだろうと思わせる出来栄えである。
マックスのネイサン・レインとゲイの演出家役ゲイリー・ビーチはブロードウェイ版でも同じ役でトニー賞を受賞、会計士レオ役はオリジナル映画のジーン・ワイルダーも好きだが、舞台版と同役のマシュー・ブローデリックの歌と踊りの素晴らしさには感心する。秘書ウーラはオリジナルでは超ミニスカートのセクシー女優だったが、ミュージカル映画版ではよりゴージャスなユマ・サーマンとなる。
そして、刑務所から復帰しハッピーに終わるラストはオリジナルよりずっと好きだ。
プロデューサーズ/The Producers
2005 アメリカ/公開2006
監督:スーザン・ストローマン
出演:監督:メル・ブルックス
出演:ネイサン・レイン、マシュー・ブローデリック、ユマ・サーマン、ウィル・フィレル、ゲイリー・ビーチ、ロジャー・バート