シネコラム

第582回 スペースボール

飯島一次の『映画に溺れて』

第582回 スペースボール

昭和六十三年六月(1988)
新宿 新宿ジョイシネマ2

 

 メル・ブルックス監督の映画には好きなコメディがたくさんある。第一回監督作品の『プロデューサーズ』はオリジナルも素晴らしいが、後にミュージカル化された舞台劇の映画版も大いに楽しめた。
 ユニバーサル『フランケンシュタイン』のパロディ『ヤング・フランケンシュタイン』、ルビッチの『生きるべきか死ぬべきか』の巧妙なリメイク『メル・ブルックスの大脱走』などどれも大傑作だが、中にはあまり笑えないちょっと残念なパロディもいくつかあるのだ。好みにもよるだろうが、私は西部劇がけっこう好きなので『ブレージングサドル』は途中でいやになった。
 宇宙SF『スターウォーズ』の壮大なパロディ『スペースボール』は、ギャグとしてはそれほど面白くない幼稚な悪ふざけレベルだが、これは出演俳優の技量にもよるだろう。よくもまあ、こんな馬鹿馬鹿しいこと考えつくよ、と思わせるだけの珍品として、一見の価値はあると思う。
 スペースボール星の悪の大統領が宇宙征服のため、某王国星の王女ベスタ姫を誘拐して大気を奪おうとするが、宇宙パイロットのローンスターが姫を救出するというストーリー。
 ヨーダを思わせる宇宙の隠者ヨーグルトをメル・ブルックスが大統領と二役で演じ、ハン・ソロを思わせる宇宙船のパイロットがビル・プルマン、レイア姫を思わせるベスタ姫がダフネ・ズニーガ、チューバッカを思わせる犬人間バーフがジョン・キャンディ、ダースベイダーを思わせる小柄なダークヘルメットがリック・モラニス。これにC―3POの女型ロボットが加わり、ドタバタの悪ふざけが展開する。
 スタートレック風の電送機の送信ミスで大統領が裏返ったり、『猿の惑星』の砂に埋もれた自由の女神像と馬に乗ったチンパンジーが出てきたり、宇宙の食堂で食事中のジョン・ハートの腹を食い破って出てきたエイリアンが歌って踊ったり。元ネタを知っていると、にやりとできる場面もたくさんある。

スペースボール/Spaceballs
1987 アメリカ/公開1988
監督:ジェームズ・ガン
出演:監督:メル・ブルックス 出演:メル・ブルックス、ジョン・キャンディ、リック・モラニス、ビル・プルマン、ダフネ・ズニーガ、ディック・ヴァン・パタン、ジョージ・ワイナー、ジョン・ハート

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