シネコラム

第574回 キングスマン

飯島一次の『映画に溺れて』

第574回 キングスマン

平成二十七年八月(2015)
飯田橋 角川試写室

 

 二十一世紀、東西冷戦が終結したとき、まったく新しい英国スパイものとして登場したのが『キングスマン』である。
 第一次世界大戦で跡取りを失った英国の裕福な上流階級の間で、政府に直属せず、中立な秘密のスパイ組織が作られる。
 所属するスパイたちは上流家庭から知能と運動能力の優秀な子弟が選ばれ、アーサー王の円卓の騎士名をコードネームとして与えられる。ロンドンのサヴィル・ロウにある紳士服店「キングスマン」がその秘密基地の本拠になっている。
 下町の下層階級の青年エグジーは幼児の頃に父を失い、母の同棲相手であるやくざにいじめられ、反骨精神のある若者に育った。ごろつきどもとトラブルを起こしたエグジーを警察から救い出したのが、キングスマンの幹部ガラハッドだった。彼は以前、中東での工作活動の際、下層階級出身のスパイ候補生に命を助けられたが、そのときに死亡した恩人がエグジーの父だったのだ。
 ガラハッドはリーダーのアーサーを説得し、エグジーに戦闘能力と紳士としての品位を教え込み、候補として育てる。『マイ・フェア・レディ』を例にとって。
 コンピュータ産業で成り上がった下劣な極悪人バレンタインが世界征服のため、無料の携帯電話を全世界に配布し、そこから人間を見境なく凶悪な殺人鬼にする電波を流し、人口調節を企てる。バレンタインに協力する世界の権力者たちが電波を避けるチップを脳に埋め込む手術を受ける。
 下劣なバレンタインの罠に落ちて、ガラハッドが命を失い、幹部の教育係マーリンの手助けで、エグジーは極悪組織に侵入する。
 バレンタインの手先の両足が刃物になった化け物女をエグジーが倒し、悪に加担する権力者たちの頭が次々に爆発して正義の花火を打ちあげるラストシーンに感激。

キングスマン/Kingsman: The Secret Servicer
2014 アメリカ/公開2015
監督:マシュー・ヴォーン
出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、タロン・エガートン、マーク・ストロング、ソフィア・ブテラ、サミュエル・L・ジャクソン、マーク・ハミル、ソフィー・クックソン、エドワード・ホルクロフト、ハンナ・アルストロム

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