シネコラム

第544回 ローマの休日

飯島一次の『映画に溺れて』

第544回 ローマの休日

昭和四十八年九月(1973)
京都 祇園 祇園会館

 

 オードリー・ヘプバーンといえば、長身で清純派、世界的な映画スターとして有名だが、一九二九年、ベルギー生まれでオランダ育ちである。父は放浪の英国人、母はオランダ貴族、英国籍だが第二次大戦中は食糧難のオランダで苦労した。
 少女時代はバレリーナを目指し、ロンドンで舞台女優となり、やがて映画に出演。ハリウッドで抜擢された『ローマの休日』のアン王女役でアカデミー主演女優賞を獲得し、映画も大ヒットしてスターへの道が広がる。その後、『麗しのサブリナ』『昼下がりの情事』『ティファニーで朝食を』『噂の二人』『シャレード』『パリで一緒に』『マイ・フェア・レディ』『おしゃれ泥棒』『暗くなるまで待って』『ロビンとマリアン』など主演作が続く。
 中でもオードリーをスターにした『ローマの休日』が私は一番好きだ。
 ヨーロッパ某王家のお姫様であるアン王女が、各国を旅行し、最後にローマにたどり着くのだが、外交訪問のあまりの退屈さに嫌気がさして、大使館を抜け出す。
 睡眠薬を飲んでいたために路上のベンチで寝てしまい、通りがかった親切なアメリカ人新聞記者のジョー・ブラッドレーに助けられる。
 ブラッドレーは彼女の正体に気づき、自分が新聞記者である身分を隠し、カメラマンのアービングに連絡して、王女がトレヴィの泉や真実の口などを訪れる実録ローマ滞在記を写真入りで執筆することにする。
 そうこうするうちにアン王女とブラッドレーの間に恋心が芽生え、彼はスクープで一山当てることを諦める。
 このストーリー展開はフランク・キャプラ監督の『或る夜の出来事』に通じる。ブラッドレー役がグレゴリー・ペックアービングエディ・アルバート。『ローマの休日』の名脚本を書いたのは当時、マッカーシー赤狩りでハリウッドで失業中のダルトン・トランボであった。

 

ローマの休日/Roman Holiday
1953 アメリカ/公開1954
監督:ウィリアム・ワイラー
出演:グレゴリー・ペックオードリー・ヘプバーンエディ・アルバート、ハーコート・ウィリアムズ、マーガレット・ローリングス、パオロ・カルリーニ

 

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