シネコラム

第542回 草原の輝き

第542回 草原の輝き

昭和四十七年十月(1972)
大阪 難波 なんばロキシー

 

 アメリカン・ニューシネマ『俺たちに明日はない』とほぼ同じ大恐慌禁酒法の時代を描きながら、犯罪ともミステリとも無縁の恋愛映画が『草原の輝き』である。主演はナタリー・ウッドと『俺たちに明日はない』のウォーレン・ビーティだった。
 一九二八年のカンサスのハイスクール。石油成金の息子バッドと、雑貨屋の娘ディーンはクラスメイトで愛し合っており、将来結婚を考えているが、ディーンの保守的な母親は娘の貞操を心配し、ふたりの仲を裂こうとする。またバッドの父エイスは息子のエール大学進学を応援し、田舎で結婚などさせず、都会の一流エリートを目指させる。ディーンの母とバッドの父が子供たちの恋に反対したため、愛し合うふたりの運命は狂ってしまう。
 バッドの姉のジニーが都会の大学で堕落して、妊娠堕胎で実家に戻ってくるのも、エイスを不安にさせる。バッドはハイスクール卒業前、結局お堅いディーンと最後までは結ばれず、若い性欲を持て余し、尻軽な女生徒ファニタと遊びの関係で結ばれる。
 愛するバッドと結ばれず、ファニタとバッドの関係に傷ついたディーンは川に身投げしようとして、精神病院に入院することになる。ディーンの両親は娘の入院費のため、エイスの石油会社の株を高額で手放す。
 その後、エール大学に進学したバッドは自堕落な学業で退学となり、食堂の女性アンジェリーナといい仲になる。
 たまたま息子の大学を訪れたエイスは、大恐慌で破産し、ビルから投身自殺する。
 その後、別々の人生を送るバッドとディーンは田舎で再会するが、お互い別の伴侶がいる。ボニーとクライドには明日はなかったが、若い恋人たちにはそれぞれの明日があったのだ。だが、保守的な親に反抗する若者はやがて六〇年代後半のアメリカン・ニューシネマの主人公となっていく。

 

草原の輝き/Splendor in the Grass
1961 アメリカ/公開1961
監督:エリア・カザン
出演:ナタリー・ウッド、ウォーレン・ビーティ、パット・ヒングル、オードリー・クリスティーバーバラ・ローデンゾーラ・ランパート、フレッド・スチュワート、ジョアンナ・ルース、サンデイ・デニス

 

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