映画批評

第507回 大怪獣のあとしまつ

第507回 大怪獣のあとしまつ

令和四年二月(2022)
立川 TOHOシネマズ立川立飛

 

 以前、ハヤカワ文庫から『キング・コングのライヴァルたち』と題するパロディ集が翻訳され、その中にフィリップ・ホセ・ファーマーの『キング・コング墜落のあと』という短編が収録されていた。ある老人が孫娘とTVで昔の映画『キング・コング』を見ていて、四十年以上前にエンパイヤステートビルから落下したキング・コングを現場で目撃したことを回想する。道路をふさぐコングの死体について、衛生局、警察、興行師、空軍、運輸省、劇場側などで様々な意見や要求が出て、ようやく交通妨害になるとの理由で片付けられた。
『大怪獣のあとしまつ』を観て、真っ先に思いだしたのがこの短編だった。
 私が子供の頃、一九六〇年代は怪獣映画の全盛期で、東宝は次々とゴジラの新作を作り、大映ガメラをシリーズ化し、TVではウルトラマンが毎週、怪獣たちと戦っていた。ゴジラはシリーズなので簡単には退治されないが、ウルトラマンは毎回、怪獣を倒して終わる。が、終わったあと、その死体をどうするのかなどとは、考えもしなかった。体長八メートルのコングと違い、怪獣たちはどれも恐ろしく巨大なのだ。
 そこに目をつけたのが『大怪獣のあとしまつ』である。監督が『転々』や『インスタント沼』の三木聡なので、遊び心満載。大臣たちが延々と会議を続けるのはシン・ゴジラだし、だれも責任を取りたがらず死体処理の担当がなかなか決まらなかったり、会議の結果、怪獣に付けられた名前「希望」を新元号のようにものものしく発表したり。大臣を演じるのが西田敏行ふせえり岩松了嶋田久作笹野高史といったアクの強い面々。設定からしてパロディであり、コメディである。東宝の怪獣映画やウルトラマンウルトラQマタンゴまで入っている。果たして怪獣の死体は始末されるのか。
 この映画の少しあとに『シン・ウルトラマン』が公開されたが、『大怪獣のあとしまつ』で国防大臣だった岩松了防衛大臣を続投、外務大臣だった嶋田久作が首相に出世していた。

 

大怪獣のあとしまつ
2022
監督:三木聡
出演:山田涼介、土屋太鳳、濱田岳眞島秀和ふせえり、六角精児、矢柴俊博有薗芳記、SUMIRE、笠兼三、MEGUMI岩松了田中要次銀粉蝶嶋田久作笹野高史菊地凛子二階堂ふみ染谷将太松重豊オダギリジョー西田敏行