シネコラム

第504回 ネバーランド

第504回 ネバーランド

平成十七年五月(2005)
飯田橋 ギンレイホール

 

 中堅劇作家のジェームズ・バリは新作風俗喜劇が当らず打ち切りとなり、意気消沈。家では妻との仲もしっくりいかず、落ち込んでいる。そんなとき、偶然にもケンジントン公園で少年たちを連れた未亡人シルヴィア・ルウェリン・デイヴィスと出会う。
 バリはルウェリン・デイヴィス家の子供たちと仲良くなり、頻繁に交流する。そして子供たちと遊びながら、新しい舞台劇を思いつく。児童劇の名作『ピーターパン』の誕生秘話である。
 ジェームズ・バリ役を楽し気に演じるジョニー・デップは当時の軽い流行作家の雰囲気をよく表している。
 シルヴィア役のケイト・ウィンスレットは見た目が健康的で、病弱で薄幸な未亡人はどうかと思うが、史実ではシルヴィアは未亡人ではなく、夫妻でジェームズ・バリと交際していたとのこと。余談だが『レベッカ』や『鳥』の作者ダフネ・デュ・モーリアはシルヴィアの父方の姪である。
 バリは『ピーターパン』の登場人物にルウェリン・デイヴィス家の子供たちの名前をつけた。ピーターパンのモデル、ピーター・ルウェリン・デイヴィスを演じたフレディ・ハイモアは、このあと『チャーリーとチョコレート工場』で主演する。
 バリとシルヴィアの仲が社交界で噂になっていると忠告する友人アーサー、口髭のこの人物こそ、シャーロック・ホームズの生みの親アーサー・コナン・ドイルである。実はジェームズ・バリとコナン・ドイルは仲が良く、舞台劇を共作したこともあるのだ。
 コナン・ドイル役のイアン・ハートジョン・レノン役や『ハリー・ポッターと賢者の石』の教師役が印象に残る脇役俳優で、TVではジョン・H・ワトスン役も演じていたそうだ。
『ピーターパン』はやがてディズニーアニメーションとなり、原作の舞台劇はわが国でも繰り返し上演され、私が新宿コマ劇場で観た舞台のフック船長は宝田明だった。

ネバーランド/Finding Neverland
2004 イギリス・アメリカ/公開2005
監督:マーク・フォスター
出演:ジョニー・デップケイト・ウィンスレットダスティン・ホフマンジュリー・クリスティフレディ・ハイモアラダ・ミッチェルイアン・ハートケリー・マクドナルド

 

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