シネコラム

第501回 スミス都へ行く

第501回 スミス都へ行く

平成十五年四月(2003)
池袋 新文芸坐

 

 政治の不正と理想を描いたフランク・キャプラ監督のコメディである。主演は若きジェームズ・ステュワート。
 ある州の新聞社主テイラーは地元の政財界を牛耳るボスであり、安く買い占めた土地に不要なダムを誘致して大儲けを企んでいた。ところが配下の上院議員が急死する。早急に後継者を選び、ダム建設を推進しなければならない。
 テイラーの手先の州知事は、地元ボーイスカウトの団長スミスを候補者として推挙する。見るからに好青年で票が集まりやすい。政治には無知で頭も鈍そうだから、当選させてしまえば言いなりに操れる。スミスはテイラーの後押しと大衆の支持を得て見事当選する。
 新米議員としてワシントンへ送られたスミスはリンカーン像を前に感激で胸を詰まらせる。あまりの純朴ぶりに美人秘書のサンダースは呆れるが、スミスは純情であっても決してテイラーたちが思ったほど愚かではなかった。ついにダム建設に疑問を抱き、テイラーの不正に気づき、これを告発しようとする。
 激怒したテイラーは配下の議員、州知事、地元の地主と結託して、自分たちの汚職の罪を被せ、金と権力を使ってスミスの悪事を大々的に報じ、議会から追放しようとする。
 荷物をまとめ、リンカーン像の前でうちひしがれているスミスにサンダースが声をかける。最初、野暮な田舎者とスミスを馬鹿にしていた彼女は、いつしか彼の純真さにひかれていた。負けて逃げ帰るの。あなたは選ばれた人ではなかったの。あたしが戦い方を教えてあげましょう。そして、スミスは議会に立つ。
 現実にスミスのような正義感の強い政治家がいるだろうか。荒唐無稽なお伽話といってしまえばそれまでだが、やはり理想を追う純真な魂が勝利するのは清々しい。
 わが国での初公開は一九四一年十月で、その約二か月後に日米開戦。敵国アメリカの映画は観られなくなる。

スミス都へ行く/Mr. Smith Goes to Washington
1939 アメリカ/公開1941
監督:フランク・キャプラ
出演:ジェームズ・ステュアート、ジーン・アーサークロード・レインズエドワード・アーノルド、ガイ・キビー、トーマス・ミッチェル、ハリー・ケリー

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