第483回 死刑執行人もまた死す
平成四年六月(1992)
池袋 文芸坐
第二次大戦中の一九四三年にアメリカで作られた反ナチ映画。ドイツの支配下にあるチェコのプラハで「死刑執行人」の名で呼ばれる冷酷で残忍な総督ラインハルト・ハイドリヒが暗殺される。この史実をフィクションを交えたサスペンスとして描いたものであり、監督はオーストリア出身のフリッツ・ラング、そして、脚本がベルトルト・ブレヒトである。
八百屋の店先で暗殺者らしい男の逃亡を目撃したのが、大学教授の娘マーシャ。警官に怪しい男を見なかったかと聞かれ、彼女は嘘を言い、男を逃がす。
夜間外出禁止令が出され、夜七時以降に外を出歩く者は容赦なく射殺される。男は逃げ場を失いマーシャの家を訪ねる。
ゲシュタポは暗殺者が逮捕されるまで、無実の市民を多数人質として逮捕し、身代わりに次々処刑していく。人質には学者、芸術家、司祭、軍人も選ばれており、マーシャの父、ノヴォトニー教授もそのひとりである。
暗殺者のスヴォダは外科医で、自首しようとするが、地下組織に止められる。ゲシュタポ警部は嘘の証言をしたマーシャを探り当て、真犯人を追いつめる。
裕福なビール業者のチャカは地下組織にもぐりこみながら、ゲシュタポ警部に内通している。チャカの密告で地下組織がゲシュタポに襲撃され、重症を負ったメンバーがスヴォダ医師にかくまわれるが、警部が踏み込むと、そこではマーシャとスヴォダ医師がラブシーンを演じている。
真犯人が名乗り出ないため、ゲシュタポは人質の処刑を二十四時間ごとから、二時間ごとに切り換える。スヴォダたちは最後の賭けに出る。
結末は痛快ではあるが、結局は人質の多くが処刑される。そして、この映画が公開されてからも、現実にはナチスドイツは近隣諸国を支配し、戦火は止まず、ホロコーストは推進され続ける。
死刑執行人もまた死す/Hangmen Also Die!
1943 アメリカ/公開1987
監督:フリッツ・ラング
出演:ブライアン・ドンレビ、ウォルター・ブレナン、アンナ・リー、ジーン・ロックハート、デニス・オキーフ、アレクサンダー・グラナック、ビリー・ロイ