シネコラム

第480回 MINAMATA-ミナマタ-

第480回 MINAMATA-ミナマタ-

令和四年二月(2022)
飯田橋 ギンレイホール

 

 ジョニー・デップといえば、ハサミ男シザーハンズカリブの海賊、不思議の国の帽子屋、女装のB級映画監督、インディアンのトント、夢のチョコレート工場主、といったエキセントリックな役柄が印象深い。そのデップが実在の写真家ユージン・スミスを演じたのが『MINAMATA-ミナマタ-』である。
 一九七〇年代の初め、かつて著名な写真家であったユージン・スミスは初老となり、妻子とも別れ、仕事もなく、借金を抱えて酒に溺れる日々だった。
 そんなとき、日本からのCMの件で通訳のアイリーンが彼の前に現れる。彼女はユージンに日本の水俣病を取材して写真を世界に発表してほしいと依頼する。すげなく断るユージンだったが、アイリーンが置いていった写真を見て、愕然とする。意を決したユージンは絶縁状態だったライフ誌の編集長を訪ね、写真を見せて水俣行きを強引に売り込む。これは世界に伝えるべきだと。
 アイリーンの案内で水俣を訪れたユージンは地元に滞在し、地域を回って住民たちの現状を目にし、話を聞く。大企業の工場が海に排出する廃液。大量の有機水銀が沿岸を汚染し、魚から人の体内に入った水銀が水俣病の原因なのだ。営利優先の会社はそのことをわかっていながら、因果関係を認めず、官憲を使って住民運動を妨害する。会社は地域に雇用など経済的恩恵を与えており、住民運動も盤石ではない。
 ユージン・スミスは患者を抱える住民たちと打ち解け、写真を撮り続け、ライフ誌に発表。世界にミナマタを知らしめる。日本でアイリーンと結婚。その後、アメリカに帰国し、亡くなる。チッソ社員からの暴行による後遺症が死因のひとつであったという。
 ジョニー・デップ演じるユージンは酒を飲みすぎたり、弱音を吐いてカメラを手放したり、そこはデップらしいが、さすがに骨太で重厚でもある。
 余談だが、ライフ誌の編集部の場面、若い女性社員がみんなミニスカートなのだ。一九七〇年代初期の風俗、芸が細かい。

 

MINAMATA-ミナマタ-/Minamata
2020 アメリカ/公開2021
監督:アンドリュー・レビタス
出演:ジョニー・デップ真田広之國村隼、美波、加瀬亮浅野忠信、岩瀬晶子、ビル・ナイ

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