シネコラム

第479回 デジャヴ

第479回 デジャヴ

平成十九年三月(2007)
有楽町 日劇

 

 謝肉祭で沸くニューオーリンズ。港の大型フェリーに乗り込む人たち。海軍の水兵とその家族が船客の大半を占めている。この楽し気な雰囲気が次になにかが起こりそうな不吉な予感につながって……。娯楽アクション映画の巨匠トニー・スコットならではの贅沢な映像に堪能させられる。
 大量の死者を出した爆破現場にATF(アルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局)の捜査官ダグ・カーリンが登場し、事件を解明しようとする。ダグは鋭い推理能力を買われ、FBIからの要請で政府の秘密研究機関に招かれる。
 壁面のスクリーンに映し出される映像。そこには爆破のあった地域の四日と六時間前に起こったこのすべてが記録されている。フェリー爆破の数時間前に焼死体として発見された女性がいて、ダグはこの女性クレアが事件の鍵だと直感し、スクリーンの中の四日と六時間前の彼女の動きを集中的に見続ける。
 それにしても、事件の直前の映像が記録されていれば、すぐにも犯人が割り出せるのに、どうして常に四日と六時間前なのか。ダグはその秘密に気づく。これは四日と六時間前の記録映像ではなく、実際に四日と六時間前を監視する装置ではないか。スクリーンを操作している科学者グループはダグの推論を肯定する。独自の監視装置を開発中に、時空の歪みが生じたと。つまり映像の中ではまだ四日と六時間前なのだ。
 映像をヒントに犯人が逮捕される。が、ダグはタイムトンネルの向こうでまだ死んでいないクレアを助け、まだ起こっていないフェリー爆破を未然に防ごうと考える。
 時間SFというジャンルには過去に戻って現代のトラブルの要因を修正する物語が多い。が、どんなに頭をひねってもどこか理屈に合わない矛盾が生じる。この『デジャヴ』はあれこれと重箱の隅をつつくより、上出来のアクションをたっぷり楽しめばそれでいいのだ、と私は思う。

 

デジャヴ/Déjà Vu
2006 アメリカ/公開 2007
監督:トニー・スコット
出演:デンゼル・ワシントンジム・カヴィーゼルヴァル・キルマーポーラ・パットンブルース・グリーンウッド、マット・クライヴン