第458回 ニノチカ
平成八年十月(1996)
銀座 銀座文化
グレタ・ガルボ。一九〇五年にスウェーデンで生まれ、二十歳でハリウッドに移り、サイレント全盛時代からトーキー初期に活躍し、三十五歳で引退、一九九〇年に八十四歳で亡くなった。私が映画館で観たガルボ主演作はルビッチが一九三九年に撮ったコメディ『ニノチカ』一本のみである。
一九三〇年代のパリ。革命時に大公家から没収した宝石類を、ソ連商務省の三人の役人がパリまで売りに来る。ロシアの食料危機を改善するための資金作りである。それを知ったパリ在住の大公女が宝石を取り戻そうと、愛人の伯爵レオン・ダルグーに相談する。
レオンは三人の役人に近づき、贅沢の味を覚えさせ、宝石を手に入れようと画策する。いつまで経っても宝石が売れないことで業を煮やしたソ連幹部が、新たに特別全権使節を派遣する。これがグレタ・ガルボのニノチカ。
がちがちの共産党員ニノチカは独自にパリを視察中、たまたまレオンと出会い、お互い惹かれあうが、同時にお互いの立場を知って驚く。宝石の交渉を口実にデートを重ね、恋で自己改革したニノチカはパリのファッションを身に着け、レオンはマルクスを読み始める。というわかりやすい展開。
だが、大公女の策略で、ニノチカはレオンに別れも告げず、三人の役人とともに急遽ソ連へ帰国する。モスクワに戻ったニノチカは質素な生活を送り、パリでの出来事は夢だったと思うことにしている。レオンから届いた手紙は検閲でほとんど塗りつぶされている。
そんなとき、ニノチカは上司に呼ばれ、再び特別全権使節としてトルコへの出張を命じられる。イスタンブールに絨毯を売りに行った例の三人組が戻って来なくなったのだ。さて、そこで待っていたのは。
モスクワの上司を演じるのは『魔人ドラキュラ』のベラ・ルゴシだった。
ニノチカ/Ninotchka
1939 アメリカ/公開1949
監督:エルンスト・ルビッチ
出演:グレタ・ガルボ、メルヴィン・ダグラス、アイナ・クレア、シグ・ルーマン、フェリックス・ブレサート、アレクサンダー・グラナック、ベラ・ルゴシ