シネコラム

第459回 恋愛適齢期

第459回 恋愛適齢期

平成十六年四月(2004)
銀座 丸の内東映

 

 ジャック・ニコルソンダイアン・キートンが共演、年配男女のラブコメディである。
 ハリーは六十三歳のプレイボーイ。レコード会社を所有し悠々自適、結婚経験はなく、恋の相手は次々と変わり、どれも三十以下の若い女性。それで何十年も通して来た。知り合ったばかりの若いマリンと終末を過ごすため海辺にある彼女の母の家に行く。
 彼女の母エリカは著名な劇作家で、終末は留守の予定だったが、妹と帰って来て娘とその老いたボーイフレンドと鉢合わせ。四人で夕食となるが、話が合わず気まずい空気。
 その夜、ハリーが心臓発作を起こし、動かすと危険なので、医者の指示でしばらくエリカの家で養生することとなる。娘も妹も仕事があるからと去って行き、病み上がりのハリーとふたりきりのエリカ。最初は迷惑がるが、言葉を交わすうちにだんだんと打ち解け、やがて老いたプレイボーイと初老の劇作家は結ばれる。
 離婚後、男を拒絶し仕事一筋に打ち込んできたエリカはまだ恋ができることに舞い上がる。が、彼にとってはエリカもまた、多くの女たちのひとりに過ぎない。彼女は傷つき、今回の出来事をコメディに仕立て、ハリーを道化役にして舞台で殺すことで鬱憤を晴らす。
 エリカと別れたハリーは胸が苦しくなって病院へ飛び込むが異常なし。胸の痛みは心臓病とは関係なく、彼の心が苦しんでいた。老いたプレイボーイは、生まれて初めて世代の近い女性と恋をし、別れたことで胸の苦しみを覚えたのだ。そして自分がかつて捨てた女たちを訪ね回る旅に出る。
 旅路の果て、最後にたどり着いたのが、パリで誕生日を迎えるエリカ。彼女に愛を告白しようとするが、そこには別の男性が。セーヌ川を見下ろし、やりきれなさを噛み締める老いたプレイボーイの哀れさ。
 お互い取り違えた相手の老眼鏡を大切に持っていたり、バイアグラを飲んでいたら心臓発作の時ニトログリセリンが危険であったり、小道具や設定、せりふも気がきいている。が、なによりも熟練のニコルソンとキートンの絶妙で自然な演技が心に残る。

 

恋愛適齢期/Something’s Gotta Give
2003 アメリカ/公開2004
監督:ナンシー・マイヤーズ
出演:ジャック・ニコルソンダイアン・キートンキアヌ・リーブスフランシス・マクドーマンドアマンダ・ピート、ジョン・ファブロー