シネコラム

第454回 エバー・アフター

第454回 エバー・アフター

平成十一年七月(1999)
飯田橋 ギンレイホール

 十九世紀、グリム兄弟が貴婦人の元へ呼ばれると、彼女はガラスの靴を見せ、例の「灰かぶり」の物語は本当にあった話だと語る。
 十六世紀前半のフランス。実際にはヴァロア朝だが、一応架空の話。妻に先立たれた裕福な農園主が男爵夫人を後妻に迎える。ところが、その日のうちに急死。その後十年間、先妻の子ダニエルは女中としてこきつかわれている。
 スペイン王室との縁談に気乗りのしない皇太子ヘンリーがダニエルと知り合い、貴族の娘と思って恋する。実の娘を皇太子妃にしたい男爵夫人は、皇太子が継子に気があると知るや、これを妨害。ダニエルはフランスに滞在中のレオナルド・ダヴィンチと仲良くなり、その手助けでようやく王家の舞踏会に出るが、男爵夫人はこれを身分詐称で非難する。皇太子は失望し、スペインとの縁談を進める。ダニエルは男爵夫人の手で悪徳商人に売られるが、自力で脱出。そこへ皇太子ヘンリーが救出に駆けつけ、ダニエルはめでたく結ばれる。
 魔法の要素を取り除き、お伽話を現実的に解釈しているが、もちろん、ここにあるのは実際の暗い中世ではなく、ハリウッド風のお城と王子様と現代娘の恋であり、それがまた面白い。
 映画の国王フランシスは時代背景的にはフランソワ一世、息子のヘンリー皇太子は、後の国王アンリ二世であろう。余談だが、アンリ二世の妃はシンデレラのダニエルではなく、フィレンツェメディチ家から嫁いできたカトリーヌ・ド・メディシス。アンリ二世とカトリーヌの間に生まれた子供たちが成人して醜く争い、カトリーヌが毒を振りまき、大虐殺の果て、王家の血筋が絶えるのを描いたのが『王妃マルゴ』だった。
 ダニエルは架空の人物だが、アンリ二世の愛人ディアーヌ・ド・ポワチエあたりがモデルではなかろうか。

エバー・アフター/Ever After
1998 アメリカ/公開1999
監督:アンディ・テナント 
出演:ドリュー・バリモアアンジェリカ・ヒューストンダグレイ・スコット、パトリック・ゴドフリー、ミーガン・ドッズ、メラニー・リンスキー、ティモシー・ウェスト、ジュディ・パーフィット、ジェローン・クラッベ、ジャンヌ・モロー