シネコラム

第444回 夏への扉 キミのいる未来へ

第444回 夏への扉 キミのいる未来へ

 

令和三年六月(2021)

新宿 新宿ピカデリー

 

 ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』は一九五〇年代に書かれた時間SFで、人工冬眠とタイムマシンが題材となっており、今でもファンが多い。

 原作では一九七〇年と三十年後の二〇〇〇年が舞台になるのだが、これを日本に置き換えて、時代設定も現代に近い形でずらしている。

 一九九五年の日本、主人公の若き科学者高倉宗一郎は共同経営者の松下と恋人鈴に裏切られ、自分が開発した画期的なロボットの研究成果をすべて奪われる。

 世をはかなんで話題の人工冬眠請負会社に申し込む。が、思い直して松下の家に行くと、そこにいた鈴に陥れられ、結局人工冬眠で三十年後に目覚めることになる。

 時代は二〇二五年。

 目覚めた彼を世話するのが人間そっくりのロボット、その名もピート。宗一郎の飼い猫と同名であった。

 世の中の変化、自分を裏切った松下はすでにこの世になく、松下の会社も存在しない。三十年後の鈴はゴミ屋敷のような安アパートで醜い初老に変貌していた。

 宗一郎を慕っていた少女璃子は三十年前の事故で死亡したと知らされる。

 様々な記録を調べて、宗一郎は時空転移を研究している物理学者の遠井博士に面会すると、博士はすでに待ち構えており、完成したばかりのタイムマシンで宗一郎を三十年前に送り返す。過去に戻った宗一郎は自分を陥れた松下と鈴に復讐する。

 原作を現代の日本にうまく置き換え、無理なくわかりやすい設定になっている。

 藤木直人のロボットピートは味はあるが、特殊メイクなどでもう少しロボットらしくしたほうがよかったかもしれない。田口トモロヲの遠井博士は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のブラウン博士を思わせる。というか、そもそも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がハインラインの影響を強く受けているのだろう。あのパート2の二〇一五年はとっくに過ぎたが、この映画の二〇二五年の未来も、現実にはすぐに過ぎていく。

 

夏への扉 キミのいる未来へ

2021

監督:三木孝浩

出演:山崎賢人、清原果耶、藤木直人夏菜眞島秀和、浜野謙太、田口トモロヲ高梨臨原田泰造

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