シネコラム

第422回 シカゴ

第422回 シカゴ

平成十五年五月(2003)
錦糸町 楽天地シネマ3

 

 ブロードウェイのヒットミュージカルの映画化。歌って踊るレニー・ゼルウィガーキャサリン・ゼタ・ジョーンズ、そしてリチャード・ギアも歌う。普段は地味な脇役のジョン・C・ライリーまでが歌うから楽しい。
 時代は退廃と悪徳にまみれた禁酒法時代のシカゴ。スターを夢見る人妻ロキシー・ハートは、ナイトクラブのマネージャーに紹介してやるといった愛人の約束が嘘だとわかり、衝動的に射殺する。人の良い夫エイモスは妻を庇い続けるが、彼女は刑務所に服役。
 そこには以前殺人で逮捕された歌手、ロキシーが憧れるヴェルマ・ケリーがいて、囚人でありながら女王のようにふるまっていた。
 ロキシーはヴェルマを出し抜き、看守長ママ・モートンの手配でやり手の悪徳弁護士フリンを雇う。金さえ出せば、どんな汚い手を使ってでも悪人を無罪にするフリン。ロキシーはフリンの働きで、刑務所にいながら名を売り、女の魅力を最大限に発揮して無罪を勝ち取るが、移り気な世間はすでに次の事件を追っている。
 人殺しの女が歌い踊ってもたいして話題にもならない。だが、それが二人なら。ロキシーは出所してきたヴェルマと手を組み、人殺し女コンビとして、売れっ子スターとなるのだった。
 きらめくステージのシーンが刑務所内のロキシーの幻想として展開する。曲も踊りも申し分なし。
 ふと思ったのだが、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』はこのミュージカル『シカゴ』をひっくり返したものではなかったか。貧しい東欧移民の女が逮捕され、頭の中で描くミュージカルシーン。が、まともに弁護もされないまま、女は処刑される。『シカゴ』には無罪を主張する東欧系移民のバレリーナが絞首刑になる場面があった。映画化は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が先だが、ブロードウェイのミュージカル『シカゴ』は七十年代からのロングランなのである。

 

シカゴ/Chicago
2002 アメリカ/公開2003
監督:ロブ・マーシャル
出演:レニー・ゼルウィガーキャサリン・ゼタ・ジョーンズリチャード・ギアクイーン・ラティファ、ジョン・C・ライリー、ルーシー・リュー

 

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